陰摩羅鬼の瑕、読了

 陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず:京極夏彦著)を読了した。
まあ、いきなりこう言っては何だが、珍しくかなり早期のうちに総て先が読めた。
いや、これはハイデガーフッサールかな、と思ってたんだけど、作品中にもそのハイデガーの名前出て来ちゃうし、多分犯人はあいつで、動機はこんな感じで、って想像してたのがビタ。


 俺は元々、推理小説の類って不得手。
と、言うのもトリックがどうのとか、正直どうでも良いんですよ。
何故犯行に至ったのか、という心理的な推移だとか、背景にあるものだとかに惹き込まれない限り、殆ど自ら進んで読む事はない。
俺の好きな江戸川乱歩は、推理小説と言うよりは猟奇と幻想の世界に浸る為に読む様なものだし、横溝正史は昔の日本のどろどろとした社会構造に惹かれている。
で、京極はと言えば、やはり事件そのものよりも、主人公の京極堂の口から語られる憑き物落としにカタルシスを得たくて読んでいるようなものだろう。


 その意味からすれば、今回のこの「陰摩羅鬼の瑕」では、先が予め読めている所為も相まって、あまりカタルシスを得る事が出来なくて残念だった。
ただ、得るものが無かったか、といえばそう言う訳でも亦、無い。
俺は自分自身が得てきた哲学、思想を改めて補強する事も出来たし、そうでない、哲学とか良く分からんて人には多分、この本の中で語られている事を自身で考える事で得る物が有ると思う。


 もう一つ残念であったのは、その必要があったからとは言え、主人公格の登場人物達があまり活躍しなかった事。
俺は京極堂の語りを楽しみにしていると先述したが、もう一つ、探偵榎木津の破天荒振りにも期待している。
だが、今回においては彼は一時的に盲となっている設定なので存分に暴れる事も、高慢でぞんざいな振る舞いをする事も少ない。
それがちょっと残念だった。


 多分、京極夏彦はこの作品に於いて、ほぼ確信して予め先が読めるようにしてあるのだとは思う。
だが、それがちと、過剰過ぎたきらいも否めない。
俺の様に、推理小説をあまり読まない人間にもそう思えてしまうのだから、読み込んでいる人には尚一層、おsの思いは強いかも知れないだろう。


 個人的には「絡新婦の理」(じょろうぐものことわり)を越えないな。
俺はこの作品が一番好きなんだが、どうしても、良いものがあるとそれを越える事を期待してしまう。
良くない事、だとは思うのだけれどね。
つうことで、オススメ度は3/5。因みに絡新婦の理は5/5。まあ金とヒマがあったらどうぞ。


 あとオススメ序でにテクノのオススメ。
KraftWerkTour De France Soundtracksがこの間出てたんで聞いたんですが。
最高。すんごい気持ちいいサウンド
まあ、テクノでエレクトロでミニマルなんで、人によっては矢張り、アレルギーのように受け付けないものがあるかも知れんけど、シンセサウンドに抵抗感無ければ是非。試聴用のサンプルなんかじゃ、悪いけど全然良いとこ分からんし。
買わなくても良い。レンタルとかで良いから、兎角聞いてみろ。