総裁選の公約に見るフリーター対策

 漸く自民党総裁選も一段落し、第二次小泉内閣が発足した。
色々と言われているけれども、まあ、一言でこの内閣をまとめるなら「ポピュリズム*1、アゲイン」だろうか。
この、自民総裁選の公約を色々見ている内に、俺にとっては非常に密接な問題があったので、それに対して論じてみたい。
否、俺にとってだけではなく、この国の殆どの人に関わりがある事だろう。


 「増加するフリーター対策」というのが公約にあった。詳しくはこちら。
フリーターの増加について、色々と議論が交わされ、なんとか出来ないかと言っている訳だが、結論から言うと、今のままで出来る訳ねえじゃん。バカじゃねえの。
フリーターの増加は、確かに若者の就職意識の希薄さ等にも関係があるけれど、もっと根深い所にその病巣がある。
今、フリーターが増えているのは構造上の必然であるとすら言えるだろう。


 まず、企業は人件費をなるべく掛けたく無いが為に、募集をしていても実際に雇われるのは経験者などの即戦力。
そうでない者はまず、アルバイトか契約社員とせざるを得ない。ほれ、ここでもうフリーター誕生だ。
勿論、その後正社員に必ずなれる訳ではなく、現実は飼い殺しとして時間が過ぎるケースも多々ある。
そう、フリーターの増加を防ぐ、と言っている割には間口が狭すぎるのだ。
また、質の悪い会社になると、ハローワークなどで募集をかけ、まず採用して国からの助成金を貰い、その後で「やっぱ君には向かないよ」と首を切る訳だ。こうなると、もう詐欺に近い。


 また、取り敢えずアルバイトをしながら会社を受けよう、としている人も多いだろう。
所が、アルバイトが忙しく、また段々と責任が重くなるにつれて、本来すべき就職活動がどんどんと遠ざかり、そして終いには身動きが取れなくなる者も居る。本末転倒なのだが、そうしないと金が入らないと言う悪循環。
そして、「今までの間何をしていましたか」と会社が問うから「アルバイトをしていました」と答えると、職歴無しと言う事で弾かれる訳だ。ここでも、間口の狭さが仇となる。
こうして、結局アルバイトをするしかない、と言うフリーターが誕生し続けるのである。


 だが、現在では、最早アルバイト抜きでは社会が廻らないようにまで浸透している。
そりゃそうだよね。責任も与えないし、賃金も安くて済むんだから、企業にとっては美味しい所だらけ。
フリーターを減らそう、と言うのは、逆に様々な問題をも引き起こしかねない。
寧ろ、フリーターの存在を認める事から物事は始まるのではないだろうか。


 上で紹介した記事の中にも、「安定就労」と正社員の事を記していたが、現在では終身雇用も崩壊し、若年層にもリストラの恐怖がにじり寄っている。それでも尚、安定就労と呼べる代物だろうか。
うちは大丈夫、なんて事が幻想なのは、既に倒産した幾つかの大企業を見ていれば分かる事だ。
現実には、正社員とフリーターの垣根など、紙一枚程度の差でしかない。
にもかかわらず、正社員には様々な優遇措置があり、それを目当てに皆、就職活動に勤しむ訳だ。
また、正社員である、と社会的に認められる事自体も目的の一つだろう。


 フリーターも正社員も、実際の状況は紙一重
で、あるならば、いっそ優遇措置なども同じにしてしまえば良いのでは無いだろうか。
福利厚生の平均化、雇用機会の均等化=アルバイト並の間口の広さの保証=年齢制限、職歴制限等の撤廃、一定期間アルバイトや契約社員として過ごした場合、企業は正社員として雇用しなければならない、等。
例えば今現在、アルバイトをしていて、正社員よりも責任が重く、労働時間が長くなりながらも、給与面や実質的な責任では軽いと言う人も多いだろう。そう言う人を救済する事にもなる。


 何よりも重要視せねばならないのは、俺が幾度も言っている「間口の狭さ」である。
雇用機会均等法が施行され、体裁としては男女平等となってはいる。実際、過去男だけの現場であった工事現場や重機を使うような所にも女性の姿が見られる様になった。
しかし、それもまだ希有でもある。働く本人の意志、並びに能力が備わっていたとしても、門前払いを受ける事が圧倒的に多いのは紛れもない事実だ。
法律で定められている事でさえそうなのに、況やそうで無いものをや。
だからこそ、金を掛けて色々する事も大事だが、まず法律などで間口をこじ開けさせる必要がある。
不平等対策こそ、本腰を入れるべき問題では無いだろうか。


 こうした、国が金を掛ける方向ってのは大概、どこか現実とズレていて。
例えば俺の経験では、以前、ハローワークで、雇用支援としてIT講習と言うのが行われていた事があった。
ITバブルのちょっと前で、WEBデザイナーコースとかもあったのだが、配られていた資料のメニューに目を通すと、それは酷いものだった。
パソコンの電源の入れ方とか、WEBデザイナーの方にしても、極々基本的なタグを教える程度。
こんな程度教わった所で、「IT講習受けてました」と堂々と企業を訪問しても塩撒かれるのがオチ。
結局、その講習の講師が一番儲かった訳である。実際、俺にやらせろと思ったし。
そう言う、現実との乖離(かいり)が甚だしいまま、金をじゃぶじゃぶ注ぎ込むのは無駄だろう。


 取り敢えずやってみました、でも金無駄になっちゃいました、では駄目だ。
より深い、構造的な所からメスを入れ、一撃必殺の積もりで対処して貰わなければこの問題は解決しにくい。
そして、この問題が長引けば長引く程、国家財政や景気を圧迫するものになるだろう。
無い袖を振れ、と言うのではない。金と時間の廻し方を国家も、企業も考えるべきなのだ。
このままでは、極一部の正社員対、そうでない者という二極分化の方に進む可能性も在り得る。
雇用形態の多様化も、それに拍車を掛ける可能性が高い。


 いずれにしても、働く意志があるものを引き上げる、共同体に組み入れて行く事を視点に据えなければ、後々に必ず、非就労者の数だけが増えていく事になるだろう。
それだけは、避けなければならぬ問題だ。

*1:大衆迎合政治などとも言われる。簡単に言えば、ご都合主義的に、国民の人気を取る事を目的とした政治。