オフ報告と言うか、レンブラント展感想と言うか。

 さて、前々回に告知した「レンブラント展を見るオフ」の報告を。
本来、オフ報告というのは、オフが成功、或いは失敗した際に行われる物だと思う。
そう言った意味では、今回はオフ報告と言うには語弊があるだろう。
…だって、誰も来ねえんだもん。成功も失敗もねえよな。


 13:00前後から急に降り出した雨は、時間を追う毎にその勢いを増していった。
早めに乗り込んだ電車の窓から外を眺めていたが、最初は窓に水滴が付く程度であったのが、俺が品川に着く頃には土砂降りに変わっていた。刻限よりも早く上野に着き、Kioskの傍に立ち表を見ると、僅か数十メートル先の建物でさえ雨で霞み朧にしか見る事が出来ない。
こんな中に、誰が来るちゅうねんな。
更に、14:00ちょっと過ぎにはJR山手線、京浜東北線が不通に。JRってこれだから!すぐヘタレるから!
もう、全く以てFuck'inだぜ! と、煙草を銜え天を仰ぐも、雨が弱まる兆しすら無い。既に路上は川の如し。
湿気の所為で、ワックスで立てた髪は水遣りを忘れた植木の様にへにゃりとなってるし。電車止まってるから参加者はおろか、他の人も動きは無いし。


 約束の刻限から遅れる事数十分して、漸く電車が動き、一人、確定していた参加者(友人)と合流する。
そんな彼から驚きの台詞が。
「僕、この雨だから帰ろうかと思った。」
…良かった。ロンリー美術鑑賞にならなくて。
結局、その後も暫く待ってはみたのだが、オフ参加者って感じの人も居なかったし、あまり遅れて絵が見られないなんて事になったら本末転倒、と、後ろ髪を引かれるような思いで駅を後にする。


 大雨は、一方で俺達に幸いを(もたら)した。
この大雨のお陰で、殆ど混雑していなかったのだ。
実は、時刻を決めてから以前に行われた雪舟展の事を思い出し、しまったなあと思っていたのだ。
その時は、長い行列に苛立ち、結局何も見ないままに上野を後にしたのだった。
行列自体が大した事は無くても、館内が混雑していては見たいものも落ち着いて充分に見る事は出来ない。
やはり、博物館や美術館は、静かにゆとりを持って見るに限る。
だから、この大雨というアクシデントは、内心俺にとっては救いですらあったかも知れない。


 レンブラントは光と影の画家、と言われている。文字通り、主体に当てる眩しい光と、周りの影のコントラストが印象的な画家だが、見ていて改めて思ったのは影があるからこそ、強い光が生きると言う事だ。
もし、周りも同じような階調で彩られて居たのなら、主体を照らす光の印象も必然的に弱くなる事だろう。
そして、時にあざとい程に当てられた光は、聖書の物語をモチーフにしている時は殊更に、その神性を際立たせる。
レンブラント派と言われる他の弟子達も、同じような感じで絵を描いているものの、やはりレンブラント本人の絵と比べると見劣りしてしまっている。勿論、良い絵なのだけど、レンブラントが余りにも強すぎるような印象さえ受けた。


 題材はやはり、宗教画が多い。
中世の絵というのは、色々隠されたテーマなどが在る事が多い。
まして、宗教画となるとそもそも、何らかのテーマを元に描いているので、それらのテーマを探り出すのに難儀する。
モーゼと十戒と言った、有名なものはいざ知らず、全然知らない人の名前とかが沢山出てきて焦り始める。
物語の、流れとして知っていても、聖書の些細を覚えている訳でもないし。
何だか終いには、俺の記憶力との戦いみたいになる。


 それでも、時に接近し、時に遠ざかって、至福至福、と見ていたら。
中年男性と比較的若い女性のカップルの、その中年男性の方がべたべた絵に触り始めたのだ。
遠くから見ている時だったので、「え?え?あれ?」と、一瞬彼が何をしているのかが飲み込めなかったのだが、我に返ると同時に、「何やってんの!」とその中年男性(以降クソオヤジ)をねじ上げてやろうと近づいたら、学芸員もそれに気が付いたらしく、俺よりも早く彼らに近づき、静かに、しかし毅然と、何処かに連行して行った。
…興醒め。すっごい興醒め。
何だ、あの無知で無教養で無分別で無礼なクソオヤジは!
まあ、俺一人ぷりぷり怒って居てもしょうがないので、少し座って落ち着き直す事にする。折角良いもの見てるんだから勿体ない。


 一通り見終わって、ミュージアムショップに向かった所、丁度聖書の解説などをした本が山積みになっていた。
これ幸い、と先程頭に出て来なかった名前などを探し、「あー、こいつか」とか「全然知らね」等と一人頷いていたら、隣に中年の夫婦らしき人がやって来て、「誰がだれとか分からないから、買っておきましょうよ」などと話し始めた。
うん、そう言う姿勢って大事だよね。俺は金無いから立ち読みで済ますけど。
と思っていたら、近くにいる店員に「旧約と新約、どっちがいいの?」と聞いていた。店員も店員で、多分新約の方が分かりやすいかと、などと答えている。
心の中で俺ツッコミまくりですよ。
旧約と新約は別物*1だから、良いとか分かりやすいとかじゃないんですよ。
あー、お節介焼きの血が疼く。教えてやりてー!
まあ、恥ずかしいからやんないけど。


 その後は美術館を出て、すっかり晴れ上がった上野を友人とうろうろしていたら、東京芸大に着いたので芸大生の振りをして学内で珈琲買って見たり、アメ横ふらふらしてジャケット衝動買いしてみたりとする内に、とっぷりと日も暮れたので飯を食って終了。
こんな感じのオフというか、美術鑑賞会であった。
もし、「行ったけど分からなかった」「居なかった」と言う方が居たら申し訳無い。でも居なかったよね…?
つうか一つ聞いて良いですか。雨さえ無ければ行くつもりだった、或いは行ったのに分からなかったって人、↓のコメント投稿で教えて。

*1:簡単に説明すれば、旧約は出エジプト記モーゼの十戒とか、新約はキリスト生誕以降の話。因みに、旧約聖書キリスト教だけでなく、ユダヤイスラム聖典でもある。なお、「約」とは神との契約の事。旧い契約の話だから旧約、新しい契約だから新約。