サッカー北朝鮮戦を迎えるに当たって

 さて、今日は我らがサッカー日本代表北朝鮮との試合が行われる。
サッカーに興味が無い人でも、最近の報道の過熱ぶりから、なんとなくは知ってる方も多いだろうね。
また、今日、さいたまの競技場にこれから向かう人も居られるだろう。


 サッカーなどのスポーツ、しかも国際試合となればどうしても愛国主義と結びついてしまうものである。
それ自体は切り離しがたいものなのだろう。事実、この俺の中にもそう言った血が流れているのを否めない。「君が代強制」て聞くと冷笑で口元が歪む癖に、会場などで応援する時は誰よりも大きな声で君が代斉唱するし。


 ただ、その愛国心とサッカーが結びついた一つの事件はまだ、俺達の脳裏に新しい。
アジアカップ決勝での、対中国戦だ。
対日感情が激しく燃え上がっちゃった中国人らから、バスが止められたりサポーターが足止め食らったり、国歌斉唱の最中にブーイングされたりと、兎角やられたい放題された事は、諸君も覚えて居られるだろう。
あの事を、思い出す。


 中国人らの対日感情に比べ、我々日本人の態度は差程悪くは無かった。確かに、「なんだこいつら?」的な感情はありはしたけれども、では中国の国歌斉唱をしている時にブーイングするか、と言えば別であった。それは、単に中国に対しての俺達の抱いている感情を表したに過ぎないだろう。
所が、だ。
北朝鮮と言えば、拉致問題とその向こうの対応など、どう見積もっても良い感情を抱けない国である。一部の人を除いて、親近感など毛程も無いのが現状だろう。
そう言った国を迎えてホームで相対する訳だ。感情的になってしまう人も出るだろう。


 ただ、ね。
例え負けたとしても。それで暴徒と化して暴力を振るったり、或いは罵声を浴びせたりするのはあって欲しくない。
俺達は、あの中国人の有様を見てどう思ったか。
「ムカつく」という事の他に、見苦しさや、醜悪さ、無様な様相を感じはしなかっただろうか。
もし、一部の人であっても、北朝鮮側の人間に同じ事をしてしまえば、今度は俺達が見苦しく、醜悪で無様なものと見なされる。
それは甚だしく損だと思うのだ。


 あの、だだっ子の様な、そしてエキセントリックな国家から醜悪だとか見苦しいとか思われるのって癪じゃない?
駄犬に吠えられて苛立ち、拳を振り上げそうになったとしてもさ、そこで殴りかかって駄犬と同じレベルに落ちる事もないだろうと思う。
ま、一番良いのはスポーツの決められたルールの中で、けちょんけちょんに叩きのめす事が出来れば、それに越した事はないのだろうけど、どうも今回は苦戦を強いられそうな気もして。


 勿論、身に降りかかる火の粉は払わねばならぬ。何かされたらやり返すのは一つの権利である、と俺は思っている。
けれど、決められたルールの中で勝敗が決したのであれば、それに対し別のベクトルで憂さを晴らしたりするような真似は、どうか皆が思いとどまってくれるよう願う。
また、あくまでもサッカーはサッカー、政治は政治と切り離して考えるべきであるだ。


 あの、アジアカップの様子から、誰が、何を学んだのか。
それが試されているのがこの試合である。
俺達日本人は大人で、節度ある民族なのか、それとも他の所と同じ様な莫迦が多いのか。
莫迦には、なりたくねえよな。