通貨偽造の多発とインフレ、円安について

 今年の年始頃から急増した通貨偽造。
今までは一万円札の偽造だったが、今度は500円玉の偽造が発生、しかも枚数としては1万5千枚以上という枚数に上り、金額としては大きくはないものの、その裏にある規模の大きさを物語る。


 悪貨は良貨を駆逐する、と言う。
英国の財務学者、トマス・グレシャムの有名な言葉だ。これは悪貨が出回ることで、市民は良価を溜め込んでしまい、結果として、市場に貨幣が流通しなくなりと言う事である。
この話を出して、「現代では流石にそれは無いだろう」と思う方も居られるかも知れない。
しかし、似たような事が起こり、そしてもっと深刻な事を引き起こし兼ねない。


 勿論、たかだか数百枚程度では信用は揺るがない。しかし、立て続けにこうした事件が起き、そしてそれに対応するために旧札を引き取り、新札を発行する。
このプロセス自体が既に「悪貨は…」となっている。これが「似たような事」だ。
確かに、交換しなければ貨幣に対しての不安は募る一方になるし。かといってこうして新たに発行しては、とにっちもさっちも行かない事になる。


 そして、「もっと深刻な事」とは。
こうした事例が多発する事で、円の信用が低下しかねなくなる。
円の信用が低下すれば、全面的な円安基調へと移行するだろう。新聞などでは、まだ円高基調が続くと言う見通しであるのだが、こうした事例によって容易く円安へと移行する事も考えられてくる。


 では円安に移行したらどうなるのか。それを書く前に、円高、円安などについて少し判りやすくまとめる。
円高とは、「円の価値が高くなること」である。
判りやすく、$1=¥100を基本とする。
円の価値が高くなり、$1=¥50になったとする。これが円高だ。
円高になると、どうなるかを例を挙げてみる。
1$のお菓子を買うのに¥100だったものが、円高になれば¥50円で済み、差し引き¥50円の得。
売る場合は、1個1$=¥100の売り上げだったものが¥50円にまで下がる。¥50円の損。
だから、円高の時は輸入が黒字を出すし、日本は輸入に頼っている側面が大きいので円高基調の方がありがたいかも知れない。
ひと昔前に「円高還元セール」などとあったのも、こういう事がからくりだ。


 逆に、円安となった場合。
先程のように$1=¥150とすると。
$1のお菓子を買うにも、¥150出さないとダメ。¥50円の損。
逆に、売る場合だと、$1=¥100だったものが¥150の売り上げ。
故に輸出が儲かるし、日本に輸出する側としては、なるべく円安であるに越したことはない。
だからアメリカが度々、円高是正交渉などを持ちかけてくるのだ。少しでも円安にして利益を増やしたいからね。


 さて、円安になった場合、日本では輸入が多い。従って輸入したものの物価が上昇する。
そもそも、食料など様々な原材料を輸入に頼っている為、円安によって価格が上がるものは数限りない。そればかりか、物価の上昇は輸入されたものだけがなるのではない。それにつられて他の物価も上昇する。
そうなると、日本はインフレ化傾向になる。
バブル期のようなインフレとは違い、所得は平行線であるのに物価だけが上昇していく。


 こうした事が現実に起きたのが、1991年のソ連の崩壊であった。
この時はもの凄いルーブル安とインフレによって物価上昇率が最高7000%になったという。
今、7万円持っててもそれが千円の価値にしかならないって事。煙草3箱とジュース買うのに7万払う。
そういう莫迦らしい時代が実際に、しかも近年あったのだ。


 インフレ化への移行は通貨偽造が主たる理由にはならない。
寧ろ、国家が抱える財政赤字の方がその大きな理由となるだろう。そして、その財政赤字に拍車をかけるのが、所謂フリーター、パート、派遣社員契約社員と言った人々の、日々占める割合の増加である。
これは単純に国力の低下を促し、そして賃金格差を大きくするものであるからだ。低い賃金のままでは、税収や年金、保険収入も侭ならなくなる。
肝心なのは、大きな原因となるものが存在し、そして引き金となるものが存在することだ。
俺の言う「深刻な事」とは、偽造の多発は引き金となるのではないか、と言う事だ。


 変に不安ばかり煽るのは大嫌いだ。
けれども、俺は日本がこれからインフレ化して行くのではないか、そして一度インフレ化傾向へと到ると、今までのデフレの反動でかなりデカい波となるのではないか、と想定している。
そうした場合に有効なのは、円ではなく外貨や金で財産を持っておく事だが、生憎その財産すらありゃしない。
津波が来る事は判る。逃げるべき高台が無い。今の心境はそんな感じ。


 追記:まあ、もし俺の言う事を真に受ける方が居られるようならば、今の貯蓄の半分くらいを外貨にしておくか、金にしておくかすべきだろうねえ。
ただ、その際に「外貨証拠金取引」という手法は取らない方が無難。
何故か? あいつら解約に応じないから。法的手段にでも訴えるなど、余程の事をしない限り、勝ち逃げは絶対させてくれないよ。


 併記:件の通貨偽造はどうも暴力団が資金源として行っていると言う見方が強いが、だとしたら彼らも愚かなる事極まりない。自分で自分の首を絞めているだけだ。いや、自分の首なら良い。周りの大勢の首も絞めてるから始末に負えん。
更に、暴力団の背後にちらつく中国がどうも焦臭い。