任務:車のガソリンタンクの製造を補助せよ

Wacrema2005-06-08

 しょぼくれててもしょうがない。と行ってきた仕事は「ガソリンタンクの製造補助」。
事前に安全靴着用と、軍手2枚重ねをするよう釘を刺される。
と、言うのも扱うものがクソ熱いので、一枚では役に立たず、またゴム付きなどではゴムが溶けるから、らしい。
仕事の内容が見えない事も相まって、作業前はかなりブルーな気持ちになる。
俺、五体満足で帰れるのか? だとか、これどう考えても軽作業じゃねえよな、等と。
利点は現場が近い所、という事だけ。だってウチから二駅だもの。


 安全靴、作業服、ヘルメット、軍手2枚重ねと言うフル装備、モチベーションはかなり低い状態で業務を開始した訳だが。
結論からいうと、楽すぎた。
具体的な仕事の流れはこうなる。
200度に熱したポリエステルの樹脂が、筒状になって天井からゆったりと落ちてくる。それを8畳程もある大きな成型機械が挟み、成型し出来たものを切り分け、その余ったゴミを冷却して棄てる。
強いて言えば、大きな飴細工を見ているような感じ。
やけどに本当に気を付けて、と口酸っぱく注意されていたが、なるほど、200度ならそれも分かる。
落ちてきた時は外側が黒、内側が半透明の3層構造になった粘土の様な堅さの物体で、成型された所だけ、機械で強制冷却するので固まっている。
切り取って、ゴミとして棄てる所は熱いうちに小さく畳んで−と言っても、大きさは両腕で抱える程はあるのだが−大きな扇風機の前で冷却する。
熱が冷めるにつれ、その半透明の所は次第に乳白色へと変化し、完全に固まると真っ白になる。


 作業を始める前は「俺何キロ痩せるだろう」などと考えてもいたが、その大きな扇風機が回り続けるので風が通り、思ったよりも工場内の気温は低い。
また、軍手2枚でも熱いとはいえ、次から次へと暇無く来る訳でもなく、丁度軍手が冷める頃に新しいものが落ちてくるので、手が熱くて大変、と言う訳でも無かった。
まあ、強いて言えば慣れない安全靴で足が重怠い感じではあったが、成形物が落ちてくる迄の間は適当な所に腰掛けて居ても良かったので、気持ち楽だった。
やる事が単調で、かつ一緒に入っていたバイト達とは殆ど会話が無かったので時間が過ぎるのが異様に遅く感じられはしたものの、当初抱いていたブルーな気持ちは何時しか消えていた。


 どうしても、初めての仕事であるとか、或いは僅かに与えられた情報から推察するだけの場合では、実際どうなのか分からないために気持ちが重くなる事は多いし、そしてそれはどんな人、どんな仕事にも少なからず言える事だろう。
けれど、いざその場に立ってみれば、当初抱いていた不安や重い気持ちとは裏腹の結果になる事もまた、多い。
勿論、予想していた通りにきつい仕事である事もあるのだけれど、往々にしてそういう時も、自分が抱いていたマイナスイメージよりはマシ、という事が多い。


 そして、そう考えると仕事の苦楽を決定づけるのは自分自身の心。
どう捉えるかによって同じ仕事でも楽しくも、楽にもなるしまた、キツくも苦しくもなる。
別に、何でもポジティヴに考えれば良いって物ではないけれど、同じ仕事をするのであれば、楽で、楽しく思えるようにする方が何かと良い事は間違いないだろう。
どうやって、と言う方法論こそが難しくはあるけれど、それを見つけ出す事もまた、自分自身の働き如何に拠るのでは無いか、と思うのだ。
ま、それでもキツイ事はなるべく避けてはいたいけれどね。


 お昼になって食堂へ赴くと、普通に食堂での社食の販売に加え、出入りのパン業者が焼きたてのパンを売っていた。
良く見ると、俺の高校の購買部にパンを降ろしていた業者だった。
弁当は持参していたが、懐かしさに思わずメロンパンを買って食べた。
焼きたてなのでふんわりしていて、けれど何処かチープな味は高校時代と変わらず。
不味い訳では無いが決して美味と言う訳でも無いメロンパンを食べていて、思わず一人微笑んだ。


 今日はサッカーがあるので社員全員が残業しないと言うのも手伝って、きちんと定時で帰る事が出来た。
帰りしな、ちょっとだけ足を伸ばし海を見に行った。
夕暮れの少し涼しさを含んだ風と、凪の海の潮騒の音が何故か心地よかった。


 追記 全然関係無いけど、サッカー自力でドイツワールドカップ行き決定。嬉しかったよ。
それにしても北朝鮮は何かと美味しい所持って行くね。あれ、もしアウェイでやっていたら大変な事態に発展していたのでは無いだろうか。