今頃、初詣

稲荷へと至る道

 どうも財布を失くしてからここのところ、絶望的に調子が悪い。
少し前までスロ屋に行けば大なり小なり勝ちを収められたのだけど、今や勝つことはおろか、当てる事すら侭ならない。
単に、今までの好調の裏返しとも言えるのだろうが、斯く如き状態が続くとある種の恐れが心中に沸き起こり、そして経済的に破綻していく。


 こういう時ばかり神仏の加護に縋るのもどうかとは思うが、にっちもさっちも行かなくなり、また正月は事故の所為で初詣どころではなく、こうして今頃初詣に出掛けた次第だ。


 寒川神社は車でしか行った事がなく、遠い印象を抱いていたのだが思っていた程には遠くなくて拍子抜け。
お祓いの申込みをし待って居ると、結構遠方からも参拝する人が多い事に気付く。
中には名古屋は昭和区山手通りから来ている人も居て、心の中で「ああ、あの辺りね?」と勝手に住所を推察する始末。


 お祓いをしてもらってからもまだ時間はある。
どうせなら鎌倉にも詣でておこう。
ただ、幾つも掛け持ちすると神様が喧嘩すると言う話をきくので銭洗弁天にだけ詣でる事に。


 風の強い午後、梅の香りがどこからか漂う。
−東風吹かば匂い起こせよ梅の花
こんな和歌を思い出しながら山道を登り、銭洗弁天でお金を洗い財運金運向上を祈願。


 帰り道に、佐助稲荷はこちら、と書いた看板を発見。ふらりと赴いてみる。
銭洗弁天と同様に、鎌倉の山の中にあるお稲荷さんだが、雰囲気が良い。主神は宇賀御霊命で、確かこちらも財運などの御利益があった筈。
神様が喧嘩するから、などと思った事を早くも忘れ詣でていると、ケツにまだ蒙古斑が残っていそうな若いつがいが、俺の参拝する様を見て「何あれ、超必死に願ってるょ。」などと曰う。
…ああ必死よ。それ以前に二礼二拍一礼は基本事項なんだが。
まあいずれ貴様らにも必死に縋る時が来るだろうよ。つうか来い。
と、ブン殴ってやりたい衝動と呪詛を「これお願いじゃありません。パスして下さい」と慌てて心の中で取り消す。


 山を降り、喉が乾いたので小町通りの「ミルクホール」で珈琲を飲もうかと思ったが、いつも同じ所も何だし、新しい店も開拓してみようと思い立つ。
…と言いつ、俺は何故普通の駅のそばの安い珈琲店に居るのでしょうね。


追記 お参りしたからすぐ勝つ、って訳には行かないな。やっぱり。
世の中そんなには甘くはないわ。