或る猫の死

 学生時代、一緒に住んでいた猫が死んだと聞いた。まだ6歳なのに。
卒業後、当時は彼女であった友人が引き取って世話をしていたが、先日、急に血を吐き為す術も無く息を引き取ったと言う。


 当然ながら、最初はとても小さな子猫で、寝ている時に踏みつぶしてしまわないように気を遣ったり、余所の猫が勝手に家に入り込んで、うちの猫の餌をガツガツと音を立て意地汚く食べているのを遠くからか弱い声で、それでも本人は恐らく必死にフーフーと声を出し抗議していたり、パンツで爪を研いで台無しにされたりなど、色々と思い出した。


 最初こそ小さな猫だったけれども、やがてぶくぶくと太りだして狸に近くなり、「ニャオン」という名前も「ニャンコ先生」「古狸」「家康」、そして最後には「猫風情」などと呼ばれもした。


 俺と共に暮らしたのは1年ちょっとしか無いのだけど、それでも、あいつが死んだと聞いて少し感傷的になった。
俺は死後の世界とか神とかは良く分からないし、また動物好きの優しい男を気取る積もりも全くないのだけれど、あの猫が、「あちら側」で元気で居て欲しいと心から思う。