羽田空港でのお菓子販売


 久々に仕事の話を。

今、羽田空港内の某お菓子屋での任務に就いている。
この仕事を始めるに当たって、一日掛けた研修があったのだが、俺はてっきり店としての研修−商品知識であったりとかなど−かと思っていたら、実は「羽田空港内で働くにあたって」の研修であった。
俺の派遣される店だけでなく、他の店で働く人たちも含め、空港内で働くにあたって、サービスを一定基準にまで上げる必要があり、その為に言葉遣いであったり、会釈の方法などを改めて体得させられる事となった。
羽田空港」という一般の方々の持つイメージを壊さないように、親身丁寧なサービスを心がけよ、と言うものだ。
無論、接客という仕事は顧客に対しサービスを提供するものであるから、親身丁寧なのは当然であり、羽田だからどうって事では無いのだけれども、改めて研修を受け、自分自身の間違っていた所を訂正するには良い機会。
また、実は羽田を含めた主要空港は現時点で最高レベルの警戒態勢にあり、不審者、不審物への対応、テロや地震などの緊急事態への対応なども叩き込まれる。
経験上、俺は何度も救急車を呼んであげたり、不審者の対応などもあった為に、気をつけねばならん所。


 研修が終わり翌日、早速店舗での任務。
ところが、俺は研修=商品知識などの事だと思っていたから、行った所で何をどうすれば良いか皆目分からぬ状態。
とはいえボーっと突っ立っている訳にも行かないので、それこそ時間を見つけては商品知識などを聞いたり、試食を味見したりなどしてセールストークの基盤を作る。


 俺の主立った仕事は、声掛けをしてお客さんを導くこと。
幸いに俺の声はでかくて通るらしく、一発目でお褒めの言葉を頂く。まあ普段からそう言う訳でも無いけどな。
この仕事場においては、セールストーク用の言い回しというのが予めあって、それを丸暗記した上で自分のトークをすると言うことを後々になって知らされる。
なら最初からその言い回しのカンペ、くれよ、と思わなくも無かったが、まあ大した問題でも無いだろう。


 さて、その羽田空港
行ったことがある人も多いと思うが、何しろでかい。
裏側は将に迷宮のごとし。セキュリティの関係で開けられないドアも多くあるため、休憩室に行くにもいちいち迷う。
また、裏側からは開けられても、表に出ると開けるのにパスを必要とするドアもあるから、うっかり出てしまうと戻れない事も。
正直、リアルで方眼紙にでもマッピングする必要があるかとすら思う。


 ただ、空港のおみやげコーナーをうろつくのは仕事だろうがプライベートだろうが楽しい。
大きなバームクーヘンを腕に付けて腕輪のようにしたい欲に駆られたり、色々な美味しそうなものが並んでいて、兎角、物欲と食欲を刺激される。
まあ、逆に言えばそれら欲を煽る物が沢山ある中で、如何に自分の店に客を呼び込むか、が俺の今成すべき仕事なんだろうが。


 因みに、俺の店のお菓子も結構美味しいよ。
今は、ごま餡を入れた卵の形をしたお菓子と、あんこの中に黒蜜を閉じこめた小さな饅頭がメイン。
特に小さな饅頭の方は、小さい乍らも濃密な味。
立場上、「どこの店」とかは言えないけれど、JAL側で、表に出てカンペ見ながらセールストークしてる人がいたら多分俺。
声掛けてくれたら試食くらいサービスしますよ。それくらいしか出来ねえけどな。