久々SP(セールス・プロモーション)


 久しぶりにSPの仕事をした。
自分自身でも、この仕事は俺に向いていると思うし、何よりも自己裁量で動けるのが良い。
内容は、家からさほど遠くない某大手スーパーで、カーペットなどの掃除に使うコロコロの販促。
既存商品との違いは「フローリングでも貼りつかない」と言うもの。実際使い勝手は良好。
商品知識を頭に入れた後に早速、業務を開始したのだが。


 初日、午前。客の数が少なく苦戦を強いられる。
余りに暇で、俺の演台の近辺をうろうろしてる内に、「広告の品」で安くなっているエプロンを発見。
見ている内に欲しくなってしまい衝動買いをする。


 しばらくしてようやく、俺の演台に興味深そうに覗き込む妙齢の夫人が現れる。
よっしゃ、とばかりにセールストークを行うと「能書きはいいからやって」と封じられる。
セールストークしないとただ、無言で演台でコロコロやるだけなんですが・・・。
で、人にコロコロさせておいてプイっていなくなるんですわ。まあ客なんて理不尽なものだし、色々な客が居るのも知ってるけどさ。失礼な人も結構いるよね。


 暫くして気が付いたのだが、この店のお客さんはどういう訳か、俺と目を遭わそうとしない。
通常、セールストークを展開する間にアイコンタクトを取って、興味を示すようなら追いかける訳だが、こうガン無視を決められると動きようがない。
挙げ句、俺の居る演台を避けるように迂回までされる始末。タダでさえ客数が少ないのに、そんな事されたら売れる訳がない。
俺の顔そんな怖い?変?などと思ってトイレでチェックしてみても、まあ普通。
ノルマはないので特にがっついた感も出してなかった筈だしねえ。俺と目を遭わせると買わされると思われたかしらん。
その割には、客が探してるモノを良く訊かれる。他に店員がいるにも関わらず。
まあ、食料品や時期的に必要なモノでは無いし売りづらいだろうなとは思っていたのも事実、とは言え余りに売れないと凹む。
それでもめげずに大声張り上げてやってたら若干の売り上げには貢献。とはいえ、俺が予想していた数よりも全然少ないので、最後、そのフロアの責任者にサインを貰う際に少し申し訳ない気分に陥る。


 翌日、トークとアプローチを変えてリスタート。
休日だけあって前日より客は多いように見える。客の立ち寄り状況は相変わらず最悪のレベルを維持しているが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。客の絶対数が多ければ興味を持つ人も増えるし、それが人を呼ぶ(サクラと同じ効果)。
が、ここで困った事が起きた。
二日目昼過ぎにして、対象商品の在庫が切れた。一応関連商品はあるのだが、俺が売るのはあくまでもフローリングで貼り付かないコロコロであって、普通のやつは特に値段が安い訳でもなく、新商品でもない。
どうしたもんだろう。モノを売りに来たものの、その売るモノが無いなんて、ねえ。
俺があと出来る事といったら、大声で接客するくらいだ。幸か不幸か、この店では「いらっしゃいませ」という接客の声が殆ど聞かれない。結果、店員がやる気無く見える。
そこで俺が声を出していれば、連鎖効果として他の店員もつられて声を出したりする。
また、お客さんも俺に色々と尋ね、俺が経験上答えられるようなら答えるし、分からなければすぐ他の店員に繋ぐ。
それが結果として、お客さんに対し好印象を残す事になる。
俺としても、お客さんから色々尋ねられるのは良い暇つぶしになるのでありがたい。


 結局、売り上げ自体はそんなに無かった。成績だけ見れば惨憺たるものだが、売るモノないんだもん。しょうがない。
しかしフロア責任者からは「大いに満足」というコメントを頂戴するに至った。
殆ど売らないで満足して頂けるってのはありがたい。まあ社交辞令的なものかも知れないけど、さ。