秋晴鎌倉、青空スイートポテト


 ♪海に連れて行って あなたの車で 天気予報明日は晴れ〜

てな感じで徐に海が見たくなり、電車を乗り継いで逗子まで海を見に出掛けた週末。
冬にも関わらず海岸にはウインドサーフィンを楽しむ人や散歩する人で賑わっていた。
浜辺に吹く風は強いものの思いの他暖かく、ぼうっと海を暫く眺めていても寒さを感じる事は無かった。


 海は良い。潮騒に耳を傾け寄せては返す波を眺めているだけで妙に安らぐ。
しかし良い加減飽きて珈琲が飲みたくなった。
そうだ、ここなら鎌倉近いし、久しぶりに「ミルクホール」でチーズケーキ食べよう。
そう思い立って鎌倉へ。

 暖かいとは言えもう師走。
街路樹は鮮やかに色付き、道は美しい暖色の斑紋(モザイク)模様。
かさかさと枯れ葉を踏みしめ目的の店を目指したものの、なんと中は満員御礼。
しょうがない、新しくカフェ開拓でもしようか。
しかし俺は忘れていた。
鎌倉でカフェ開拓に成功した試しがないことを。


 暫くほっつき歩いて、細い路地の奥に一軒の小綺麗なカフェを見つけた。
おいもカフェと名乗っており、珈琲とスイートポテトが売りらしい。
久々にスイートポテトも悪くないな、などと若干の期待感にワクワクしつつドアを開ける。
珈琲とスイートポテトを頼み、煙草を出すと灰皿が見当たらない。
ひょっとして、と主に問うと、店内は禁煙だからと表のテラスに案内された。
…テラスと言うと聞こえは良い。
しかし実態は単なる店先。垣根で仕切られているどころか軒すら掛かってやしない。
シャンゼリゼオープンカフェだってもう少し配慮ありそうなものだがなあ。


  太陽も落ちすっかり風も冷たくなって来た中、珈琲をすすりスイートポテトを喰らう。
道行く久々が少し物珍しそうにこちらに視線を向けては俺と目が合い、バツが悪そうに早足で過ぎて行く。
俺もなんだか嫌なので、「スイートポテト美味しいスよ?」と目が合う毎に営業をかける始末。


 実際、スイートポテトは悪く無かった。
敢えてあらごしせず、ゴロゴロとした食感はなかなか新鮮だったし、芋自体が良いのか素朴な中にも際立った美味しさを感じた。
しかし食べている内に自ら作ってみたくなったのも事実。
今度、休みにでも作ってみようかしらん。
自分で作ったなら外で食べる事もないし、さ。