Spring has come

　春が来ていた。
喩えでは無く本当に、道は桜色に染まり、街を抜ける風は仄かな花の香を纏う。
日毎に木々は緑の色合いを鮮やかなものにして行く。

　今の工場に派遣されそろそろ一年が経つ。
ここは、時間の経つのが早い。
日々足腰の痛みに耐えながら仕事が終わるベルが鳴るのを待ち続けるのを繰り返すだけで一週間が経ち一カ月が過ぎる。

　当初期間限定だったのが何時しか期限がなくなり、辞めようと思うと新しい仕事やラインを任される。人数はいてもきっちり動ける人が少ないのは分かっているから、今辞めると困るだろうな、と思う事の繰り返しが今に至る。
まあスロットで負けたりしたのもあるんだけどな。

　この一年、俺は停滞の中に居た。それも、ずるずると引きずられる形で。
停滞は腐敗を産む土壌となる。
腐敗する前に、そして足腰が駄目になる前になんとかしないとならないね。

　空を見上げれば桜が舞っている。綺麗だね。