恐るべし、ゆとり研修生


 今、ウチの現場には一種の社会見学のような形で、とある高校から期間限定の研修生が来ている。
研修とは言ってもあまり複雑な事や安全面の点で問題がある事はさせられないので、必然、一番簡単な事に従事する事になる。


 今日は彼はダンボーラー、すなわち俺達のラインで部品を開梱した際に出るダンボールを広げ畳み直し、大きめの籠台車に載せる作業だ。
本来、係長や班長と言った人達が指導するのだが、たまたま俺が近くで作業していた事もあり、仕事の合間に教える事になったのだが。


 籠台車にダンボールを載せる際、乱雑に積んでは量が乗らず、何度もダンボール置き場に向かわないとならず面倒だ。
なので、「もっと丁寧に積まないと」言いつ彼が乱雑に積んだダンボールを積み直していると、「そこでやられると邪魔なんすけど」と。
…あれ?


 まあ研修生だし。いちいち気にしてもしょうがない。苛、と来る気持ちを抑え、片付けを済ませて自分の仕事に戻る。
暫くした後に様子を見るとまた乱雑になっているので、丁寧に載せるように指示。
するとちょこっと片付けをし「こんなもんで良いッすよ」と。
…あれ?指示出したの俺だよね?
苛レベルが少し上がり「それを判断するのは君ではないよ」と答えた所素っ頓狂な顔をされる。


 挙げ句には、ダンボール解体用のナイフをいつも順手で持ちながらダンボールの回収をしに彷徨いたりしている。
とてもじゃないが危なっかしいので「常にナイフを持っていると危ないから、移動する時は台に置いてね」と指示すると、「予備はあります」との答えが。
あれ?俺は理由言ったよね?
正直、なんか刺されそうと思い、兎に角ナイフを置かせる。


 あまり苛っとした顔を見せたくないし、平静を装ってはいたけど内心は驚きっぱなし。
何?これがゆとりパワー?
なかなかの破壊力だわ…