関東近郊住民へのちょっとした警鐘

 ここ数日、妙に周りが臭う。
生臭く、腐った様な臭い、それも生半可な臭いではない。本当に吐き気がする。
なんだろう、海苔の腐ったものとくさやを混ぜている様な感じの臭い。
最初は猫が、家の何処かに糞をしたかと思った位だ。
所が、家の外に出ても同じ臭いがする。
街全体が腐臭に満ちている。
これは恐らく海からの臭いだと、そこで漸く分かった。


 稀に、暖かくなってくると海の方から臭いが風に乗ってやって来る事はある。
満月の大潮の時など、潮が引いて護岸に付いた貝や海草などが太陽に照らされて腐り、その臭いが乗ってくるのだ。
だが、それは潮が満ちれば臭いはしなくなり、故に精々数時間程度で臭いは収まるものなのだが、今のこの臭いは既に3日め。
窓を開けて寝れやしねえ。
第一、こんなに臭うのは記憶には無い。


 海を見に行った所、一面トマトジュースを撒いたかのように紅に染まっていた。赤潮だ。
臭いも凄く、油断すると胃液が口に登ってくる。
海面には沢山の魚が腹を向けて浮かんでおり、海中の酸素が無い事を示している。


 赤潮自体は、実は珍しい事でもない。
ここらでは、夜光虫という、夜になると光を放つプランクトンが大量発生して赤潮が起きる。
だが、赤潮が発生してもこんなに魚が浮く程の事はない。
逆に言えば、今回の事が如何に大規模で、かつ例を見ないものであるかを物語っている。


 勝手に推測してみたが、恐らく連休前の陽気で海水温が高くなり、プランクトンが繁殖した所で急にまた気温が落ち込み、そのプランクトンが死に出した事、そしてそれらが最近の昼間の陽気で海面で腐り始めた事や、東京湾内の潮が外洋に出て行かないで滞留している事が原因なのではないだろうか。


 神奈川県内では南は横須賀の方、北は横浜港あたりまで赤潮が発生している事は確認した。
これが、もっと広範囲に広がるものであるのか、東京や千葉の方まで広がっているものであるのかはちょっと分からない。
だが、これが広範囲であればある程、状況の異常さを表す。


 俺は変に不安を煽るのは大嫌いだからあまりこういう事は言いたくはないのだが、状況が異常であればあるほどに、地震などの天変地異が起こるのではないかとか、そう言う事を考えてしまう。
思い出せば、確か先週は、関東では地震が多かったし。
もし、これが大きな天変地異の予兆であるのなら、逃げ出すタイミングは将に今。
だが、俺が最初に予測したとおりの理由だったら杞憂。
さて、正解はどちらになるのだろう。逃げ出して後悔するか、それとも逃げ出さずして後悔するか。
まあ、あと数日すれば臭いも収まるだろうけどね。
なんて思っているのは、俺がやっぱり根本的には楽観主義である事を物語っているからだろうか。


 先述した通り、あまり不安を煽りたくはないけど、関東に住んでいる人はこれから数日、少し注意しておいた方が良いかも知れない。
徒に大騒ぎするのではなく、例えば夜、飲みに行くのを少し控えて早めに家に帰るとか、あまり遠出しないようにするとか程度で。
もし、何かあるとしたらこの一週間だ。と思う。
それで何もなかったとしても、特に損をする訳でもない程度に、注意を。
杞憂と云うのも莫迦らしいしね。
ま、気に止めるも止めぬも各自の判断で。俺に後で文句云われても知らんし。