難しい言葉の言い換え

 外来語の分かりやすい言い換えを検討している国立国語研究所は5日、52語の言い換え中間案を発表した。今年4月に最終案を発表した第1回分の62語に次ぎ2回目。今回の52語については、専門家の意見などをさらに加味したうえで、10月にも最終案をまとめる。と言う話。ソースこれ。


 この、言い換える対象になった言葉と、言い換えられた言葉、そしてその認識率を改めてここに挙げてみよう。( )中の数字は理解、浸透率を示すパーセンテージね。
 
 バックアップ (1)支援(2)控え(70.6)
 ミスマッチ 不釣り合い(69.1)
 オンライン 回線接続(63.4)
 ビジョン 展望(61.6)
 マネジメント 管理、管理者(60.0)
 マルチメディア 複合媒体(59.3)
 シミュレーション 模擬実験(58.3)
 マーケティング 市場戦略(58.1)
 リアルタイム 即時(58.0)
 コミュニティー 地域社会、共同体(57.7)
 パートナーシップ 協力関係(55.0)
 トレンド 傾向(53.0)
 ライブラリー 図書館(50.0)
 ワークショップ 研究集会(48.9)
 ダンピング 不当廉売(48.8)
 ベンチャー 新興企業(47.5)
 オブザーバー (1)陪席者(2)監視員(46.8)
 フォーラム 公開討論会、交流広場(46.8)
 データベース 情報集積体(45.6)
 グローバル 地球規模(41.3)
 コンセプト 基本概念(40.2)
 バーチャル 仮想(38.9)
 コミュニケ 共同声明(36.6)
 セクター 部門(35.0)
 ボーダーレス 無境界、脱境界(32.5)
 マクロ 巨視的(32.4)
 スクーリング 登校授業(32.4)
 セーフティーネット 安全網(30.9)
 モニタリング 継続監視(28.9)
 コア 中核(24.7)
 ログイン 接続開始(23.4)
 アイデンティティー 自己認識(23.1)
 ポテンシャル 潜在能力(21.1)
 グローバリゼーション 地球規模化(19.3)
 タスク 課題(19.0)
 インフラ 社会基盤(18.9)
 ケーススタディー 事例研究(18.1)
 コラボレーション 共同制作(18.0)
 グランドデザイン 全体構想(14.3)
 フレームワーク 枠組み(14.0)
 イノベーション 技術革新(13.6)
 キャッチアップ 追い上げ(13.6)
 ノーマライゼーション 等生化、福祉環境作り(12.2)
 サマリー 要約(11.6)
 モラルハザード 倫理崩壊(10.5)
 インセンティブ 意欲刺激、意欲刺激剤(10.4)
 アーカイブ 記録保存館、保存記録(8.0)
 エンパワーメント 能力開化、能力強化(5.7)
 メセナ 文化支援(5.7)
 タスクフォース 特別作業班(4.9)
 ユビキタス 時空自在(3.9)
 エンフォースメント 法執行(3.4)


 見て貰えれば分かるけれど、殆どが「これは四文字熟語を作ろう」て感じに為っている。
しかも言い換えた割には分かりづらいものや、余計に意味がぼやけているものも多い。
こんなのを官庁では多用しているらしいけど、それってどうなのよ。
単に、「カタカナカッコいい!」って感じ多用しているような印象を強く受ける。
難しい言葉を多用している人は、得てして自分がインテリになった様な気で居るものだが、本来の意味をよく分からずに使っていたり、或いは簡単に言い換えられるにも関わらず、敢えて難解な方を選ぶと言うのもなんだか。
まあ、そのこと自体は俺もあまり偉そうに言えないのだけど。


 ただ、言葉は平易であるに越した事はない。
難解であるから良文だ、と言う事はあり得ない。一番良い例は、西田幾多郎の本である。もし本屋に行く事があったら、哲学のコーナーで「善の研究」とか見てみると良いだろう。
何書いてあるかさっぱり分からなくて、好い加減本を床に投げたい衝動に駆られる事だろう。
表記が平易でも、内容が難しい事だったら俺の理解力が悪いんだ、と諦めざるを得ないけど、これは純粋に表記が難解。しかも、その難解である所為でありがたがられている事実もある。


 結局、こういう感じで特別に、難しい言葉を敢えて使うってのは、単に自分一人で悦に入っているだけのような気がする。
勿論、言葉によっては平易にして説明を一々したりするよりも、難解な方を使ってニュアンスで理解させたりと逆に分かりやすい事もあるんだけど、そう言うものはやっぱり稀ではあるだろう。
しかも、上記の言い換えられた言葉の方も、その難解である言葉を使う事で悦に入る所からは抜け出せて居ない感じもする。
どうせ言い換えるのであれば、極端な程にまで平易にするべきだろうに。
結局、役所ってやっぱりどこか、自分たちを特別視しているような感じ。でも、これは俺の被害妄想的な視線では無いと思う。


 文章にしても、言葉にしても、平易であるに越した事は無い。
まだ、作家の「個」が表れるような文章だったら兎も角、官庁などで遣り取りされる公文書などに敢えて難解な言葉が使われているのであったら、それは単にイヤミでしか無いだろう。
文字通り、公文書というのは「公」の文書であって、限りなく多くの人達が理解出来るものでなくてはならないからだ。
そう言う視点が欠けているのであれば、幾ら自分を特別視していたとしても、本質的には頭が悪い証拠を堂々と、見せびらかしているに過ぎない。
エリートさんだったら、それくらいは理解出来そうなんだがねえ。


 因みに、張り合う積もりは無いけれど、俺流に書き換えてみたよ。尚、言い換える必要のないのは(そのまま)と記す。。
自分が如何に言葉をきちんと知っているか、と言う一つの目安にもなる。
各個人で比べてみるのも面白いかも知れないね。



 バックアップ (1)支援(2)控え (そのまま)
 ミスマッチ 不釣り合い(そのまま)
 オンライン (回線の)接続維持
 ビジョン 視野・展望
 マネジメント 管理(そのまま)
 マルチメディア 音や映像
 シミュレーション 仮想実験
 マーケティング 市場調査
 リアルタイム 即時、同時
 コミュニティー 地域社会、共同体(そのまま)
 パートナーシップ 協力姿勢
 トレンド (最近の)傾向
 ライブラリー 情報集、資料集
 ワークショップ 研究会
 ダンピング イカサマ、いんちき、不法廉売
 ベンチャー 新興企業(そのまま)
 オブザーバー (1)陪席者(2)監視員(そのまま)
 フォーラム 討論会、交流場
 データベース 情報集合
 グローバル 世界的
 コンセプト 基本概念(そのまま)
 バーチャル 擬似的、仮想
 コミュニケ 共同声明(そのまま)
 セクター 部門(そのまま)
 ボーダーレス 無境界、枠を超えたもの
 マクロ 巨視的(そのまま)
 スクーリング 授業
 セーフティーネット 安全網(そのまま)
 モニタリング (映像による)監視
 コア 核
 ログイン (回線)接続開始
 アイデンティティー 自己同一性、自己証明
 ポテンシャル 潜在能力(そのまま)
 グローバリゼーション 地球規模化(そのまま)
 タスク 課題、仕事、任務
 インフラ 社会基盤(そのまま)
 ケーススタディー 事例研究(そのまま)
 コラボレーション 共同制作(そのまま)
 グランドデザイン 全体構想(そのまま)
 フレームワーク 枠組み(そのまま)
 イノベーション 技術革新(そのまま)
 キャッチアップ 追い上げ(そのまま)
 ノーマライゼーション 通常化、普遍化
 サマリー 要約(そのまま)
 モラルハザード 倫理崩壊(そのまま)
 インセンティブ 意欲刺激、意欲刺激剤(そのまま)
 アーカイブ (保存した)記録物、(圧縮された)情報
 エンパワーメント 能力開発、能力強化(そのまま)
 メセナ 文化支援(そのまま)
 タスクフォース 特殊部隊
 ユビキタス 普遍、遍在、ありふれているもの
 エンフォースメント 法執行(そのまま)


 自分でこうしてやってみて思ったけど。
そんな、敢えて小難しく言う必要のないものの、何と多いことか。
逆に、言い換える必要のないものも結構多い。
ログイン、とかオンライン、ミスマッチ、そういったものは逆に言い換えることで判り難いものにもなっている。
言葉に含まれるニュアンス自体も意味として含まれなければならないから、文句言っておいてなんだけど、結構難しいね。
自分で知っているつもりになっていても、実際にどう表現しなおすか、と言うところで窮すのもあったし。
意外と、俺は言葉を知っているようで本質としては知っていないみたいだ。
それでも、意味もわからずに使っている訳ではないけれど。と、言い訳をしつつ。