猪木の設定6

 打って負けた。正式には「アントニオ猪木と言う名のパチスロ機」。
アレだ、最高設定っつう奴で10万とか勝てるかも知れないのに、だ。
バカバカ、俺のバーカ!


 いや、結果出すには時間が少なかったのと、もともとこの機種は辛い、渋いと評判ではあったのと。
可能性としては勿論、十二分にあり得る事ではあるのだが、我が事と成るとそれはまた別。勝って当然とすら思っていたから余計に落ちこんだ。


 なんだかとてもしょぼくれて、家に帰りたくないと暫く思っていたのだけど、夜の街に独り、居た所で何か在るという訳でもないし、俺の使う駅の一つ手前で止まってしまう最終電車に乗り込んだ。


 カスタード色をした三日月が照る下を、とぼとぼと10キロほどの道のりを歩く。
昼間の暑さが残っていて、蒸し暑い。
暫く歩いたら、猫が俺の前を歩き始めた。
その猫は、とても痩せていた。