「仄暗い水の底から」感想、と言うよりは悪口

 本当はこれ、先週に出す積もりだったんだけど、色々先送りしてる間に結局流れてしまいそうで。
昨日負けた憂さを晴らすように再構築し、お送りします。
言っとくけどネタバレ。でもね、バレたって別に問題ないから。マジで。
あと、この感想はTV版を元にしてます。映画(ビデオ)版や原作とは若干異なるかも知れません。もっとも、大した違いなんてこれはなさそうだけど。
さて、ほんなら噛み付きますよ。


 あらすじ。
 離婚した、狡猾そうな夫と親権をめぐって調停中の淑美(黒木瞳)は娘と新しい生活を始めるためにマンションに引っ越しをした。ところが、入居してすぐに奇妙な出来事が続発。幼稚園に通い始めた娘は突然昏倒し、淑美も何やらただならぬ気配を感じる。
何だか雨漏り(というか水漏れ。暮らし安心クラシアン呼べよ)してたり、捨てても捨てても紅い幼稚園バッグが表れたり、電柱に貼られた神隠しの子供のポスターが気になったり、人影見たりとそんな塩梅。


 唯でさえ神経過敏な淑美。もういろんな事でいっぱいいっぱいに成ってヒステリー寸前。ついには調停委員の前で元夫捕まえて「お前の策略か」と大暴れ。
その内、神隠しのポスターの子供が淑美の前に表れ出す。何かを感じた淑美は屋上の貯水タンクによじ登り、そこで起きた事総てを察する。と、まあこんな感じ。


 一言で感想言えば、ツッコミ所満載。
まず、これ離婚調停の最中に起きる不可解現象の話だと思うんだけど、そもそも親権は必ず片方じゃ無ければならない、っておかしいと思う。養育権と面接権はそれぞれ分離すべきだけど、どちらかが独占するものでもない。子供は親の道具ではない。
それ差し置いて「子供は私だけのもの」「子供は妻には渡さない」なんてのはナンセンスの極み。ま、多いんだろうけどさ。
それに、タイトルにも使われている水。これがもう、あからさまにおかしい。
終いには部屋の中でビッグウエンズデイ。絶対サーフィン出来そう。水道代嵩むから、業者呼べって。管理人も気付け、幾ら無能でもよ。


 とどめは、終盤の話。
何か感じた、と上述したが、貯水タンクに子供が落ちたんですわ。で、未だ浮かばれないと。
その事を感じて探索しに行くのだが、ちゃんと説明してから出れば良いものを、不安がる子供ほっぽらかす様にして、というよりは不安を与えるようにして貯水タンクを確かめ、戻る。
戻ったら子供は風呂場で倒れてる。こりゃアカン、もう逃げようと娘を抱き抱え、エレベーターの中で「もう離さないから」みたいな事を言った後で、自分たちの家から自分の子供が泣きながら出てくるのを見る淑美。
じゃあこれ誰、と恐る恐る見ると、事故にあった浮かばれない魂。更にはその霊が、変な顔をしながら淑美を殺そうと首をぎゅうぎゅうと絞める。
ここで怖がる所なんだろうけど、ビジュアルが全然怖くない。だって今まで幽霊ものだったのに、急にゾンビとかみたいに成るんだもの。
親を心配して近づこうとする我が子に「来ては駄目!」と言い、エレベーターのドアを閉める。
そしてその刹那、浮かばれない魂に言う言葉が。「あなたは私の子よ。」
俺、思わず「えー?!」
お前、自分の子供に離さないとか言ったばっかじゃん!しかもなんで唐突に我が子宣言!
亡霊も亡霊よ。なんで淑美なの。そうで無ければならない理由が全く提示されないし。
そう言った意味では、或る意味この映画はミステリー。


 話は唐突に10年後に飛ぶ。
高校生になった娘は、ふとしたきっかけで、廃屋のようになった、嘗て住んでいたマンションに向かう。
そこで母親の霊と対面する。何故死んだかは明らかにはされない。
で、なんか談話して、「母は今も守ってくれて居る」とか言って終わる。訳分からんでしょう。でもそう言う映画。
なんと言うか、その。なめんなよ?
つうか金返せ!尤もテレビで見ただけ、だが。じゃあ、金よこせ、だな。


 一応、前振りとして淑美の、幼い頃の離婚によるトラウマだとか、精神的に不安定な所とかは提示されてはいるのだけど、それはあまりにも稚拙で説得力が無い。
つうかね、離婚が与える影響力とか、或いは精神に不安定な人とかを莫迦にしすぎ。ここまで来ると失礼であるとすら言えるかも知れない。
聞きかじった話をおもしろ半分で適当に膨らましている、そんな印象さえある。


 日本のホラーってのは、あるべき物がない、或いは無いはずのものがある、という様な所、それと、じわじわと来る不安感に集約されると思う。
作中にて俺が一つだけ感心したのは、神隠しのポスターが雨に汚れ、丁度子供の写真の目の辺りがぼやけてしまって居る事だった。
逆に言えば、そう言う一瞬一瞬というか、パーツの怖さに甚だしく欠けたモノだったと思う。
この映画は怖い怖い、と聞くけれども、怖い映画だと思うから怖いのである。幽霊の正体みたり枯れ尾花、と言うでは無いか。
こんなの、尻でもぼりぼりと掻き乍ら、離婚調停の話として見れば全然怖くない。
少なくとも、俺が実際に体験した事に比べれば屁でもないわ。


 よく考えれば、見て欲しいものでも無いものに何、俺は必死に噛み付いてるんだろうか。
否、寧ろこんなの見て欲しくないのに。
同じ金を出すのであれば、もっと良いものを勧めたい。そうだな、ホラーだったら「ゴーストシップ」とか。
あれは怖くないけど、まあ、面白いよ。犯人探しとしてもね。