名古屋での立てこもり事件とメディアの論調の誤差

 名古屋で軽急便という宅配会社に立てこもった男が、人質共々自爆し、警察官一人も犠牲になってしまった事は、ニュースなどで報じられている通りだ。
この犯人が立て籠もった理由として伝えられているのは、給料の支払いを求めてとの事。
「そんな事を理由に?」とメディアなどでも疑問視がされているが。


 そもそもこの軽急便
一部では詐欺商法だのと言われていた事でもあった。
新聞の折り込み広告などで、「月40万円近く稼げます!」などと募集しているのを見た事がある人も居るだろう。
このシステムは、契約者が入会金を支払い、更に150万円前後で専用の車両の購買をさせられた上(この車両も当然、会社が儲かるように金額が上乗せされている)、得た報酬の約1/4を手数料などの名目で持って行かれる。
因みに荷物は一個数百円単位、が相場らしい。


 こういった事がある、という前提条件を元に様々なマスコミの論ずる所を見てみると、同じ事を扱って居るにもかかわらず、両極端とまで言える様な温度差がある。
まず朝日新聞の論調では、この犯人は仕事に対してあまり真面目ではなく、単なる金欲しさ故の犯行である事を匂わせる文面となっている。
それに対して毎日新聞では、「働き者と評判であった」という一文を載せている。
同じ事を伝えるのでも、こうも温度差があるのだ。


 犯人は死亡し、真相は闇の中。
これらのニュースから俺達が何を、どう受け取るかはそれぞれ。
この犯人に対しひどい奴だ、と思う方も居られるだろうし、どんな事があってもこういう事をしてはならない、と言う人も居るだろう。
会社がそう言う事してたんじゃ、しょうがねえなあと思う人も居るだろうし、溜飲を下げるような面持ちで居る人もあるだろう。


 勿論、法に反し罪を犯す事は悪い事。
なのだけれど、俺の場合は、この犯人も被害者であったような気がしてならない。別に同情したりする積もりも無いんだけどね。
ただ、テレビのニュースで放映されていた、この会社の社長へのインタビューがされたシーンで、自分の会社の関係者が関わって、そして死亡しているというにも関わらず、薄笑いを浮かべながらカメラの方へと返事を寄越していたのを見て、益々そう思った。
別に大泣きしていれば良いとは言わない。
けれど、この余りにも品性に欠けるような社長のやっている会社の事だ、恨み積もる人も少なくはなかろう。そんな事さえも思った。


 事実は一つ。
だが、それを語る口は数多。
その数多の中から、如何に真実に近づくか、物事を鵜呑みにしないで居られるか。
そんな事をも考えさせる事件であったように思う。