スロ屋にて隣の若者にいやがらせを受けた事

 今日も今日とて、北斗の拳を打って出来たマイナスを補わんとネジパル打っていた。
モードとRT天井を推察して、当たりそうなの打って深追いしなきゃほぼ勝てるし。
そんな最中、俺が打っていた横の若者が、小当たりが揃ったもののメダルがなくなり、「もうすぐボーナスですよ」という前兆が出まくっているにも関わらず、更に隣に移動した。
捨てて良いんですか? ほんなら俺打ちますよと俺も移動。程なくして俺大当たり。隣の若者、憮然。徐に代の下を蹴ったりと、不機嫌さを顕にしている。


 その後も俺は自力での解除を含めコンスタントに大当たりを引き、方や、その若者は移った隣の台で、ボーナスの放出が期待できないゾーンを暫し打ち込んだ後に席を立った。
刹那、俺の右肩に肘をぶつけて後ろを通り過ぎていった。
通路が狭いから、ぶつかったかなと一瞬思ったが、いや、あれはわざとだろうなとすぐに思い直し、やれやれとため息をついた。
ところがまた、その彼がすぐさま戻ってきて-どうやら、彼は両替をしに行ったようだった-俺の後ろを通り過ぎようとする。
多分、またわざとぶつかって来るなと思っていたら、案の定。
俺はちょっとニヤっと笑いが漏れた。
つうか、最初の一回はともかく、それ以降は完璧に俺の引きによるものなのだがな。


 相変わらず、隣では憮然と、そしてちらちらとこちらを気にしながら、と言うよりも、自分の台よりも俺のを見ながら打ち、またやにわに席を立った。
ちょうどその時、俺は当たりを確信して演出を見ていたのだったが、再度、俺に肘をぶつけてくるだろうから、反射を利用して背後を見て、うまくタイミングを取って肘うちをよけるのに成功。しかも、それに合わせてボーナス確定の演出を出すおまけつき。我ながら嫌味ったらないね。


 最初は、そいつ捕まえて「何か用か」と聞こうかなと思っていた。
けれども、それは単に喧嘩の火種を俺が撒くだけだし、俺の行為自体に何の意味もない。
そして、同時に彼の怒りのようなもの、そのものも無意味極まりない。
確かに、捨てた台を取られ、すぐに当たったら良い気はしない。その気持ちはわかる。
けれども、かたや当たって嬉しがり、かたや当てられて悔しがるという差を作ったのは紛れも無く、情報を持っているか持っていないかということだ。
悔しがる前に、自分の甘さを、無知をこそ恨むべきだとは思う。
この事は同時に、スロに限った話では決してない。
税金や法律、いわゆる一般常識、その他諸々の事に於いても同じ事だと言えるだろう。


 知ることは力である、と俺はかねてより思っているし、言い続けている。
何か、損をしたりした時に、その損が生じたのは果たして如何なる理由によってなのか。どうすれば得するのか。
そこを考えずして単に感情的になるようでは、同じ過ちを繰り返すだけだろう。


 怒りたくなる気持ちは分かる。
けれど、やっぱりそこで明暗を分けたのは何かを考えなくては、どんな事に対しても損をし続けるだけなのではないだろうか。
勿論、考えたからといって、では、以降必ず得をするのかといえばそうでもないとは思うが、それでも、考えないでいるよりは何倍もましだと思うのは俺だけだろうか。