民法全文の口語化について

 法務省が片仮名文語体の民法全文を、平仮名口語・現代語化する方針を決めた。
詳しいソースは>>こちら
あまり長くないので以下引用。

民法全文を口語化=「僕婢」は家事使用人、「木戸銭」は入場料−法務省

 法務省は29日、片仮名文語体の民法全文を、平仮名口語・現代語化する方針を決めた。1896年に制定された現行法には、今では全く使われなくなった用語が数多く残っており、「僕婢(ぼくひ)」を「家事使用人」に、「木戸銭(きどせん)」を「入場料」に言い換えるなど、古い表現を全面的に見直す方針だ。
 同省は、週明けに口語化案を公表した上で、今秋に予想される臨時国会民法改正案を提出する。来春の施行を目指す。
 民法は全5編から成り立っており、今回、口語・現代語化するのは、民法の第1編(総則)、第2編(物権)、第3編(債権)で、第1条から第724条まで。第4編(親族)と第5編(相続)は、「家」制度が見直された現行憲法の制定を受け、1947年に既に口語化されている。 (時事通信


 なんだ、やっとなのかよ、と言う印象。
法律用語は兎角難解な代物と言われ、その理由の一つは明治期に制定されてから今だ尚、その言葉を用いている側面や、その難解な言葉を用いる事で優越感を得る人々が少なからず居る事に起因しているだろう。
もし、ちょっと読んでみたければ「民法」で検索して条文を読んでみるといい。多分、うんざりする。
ま、慣れれば問題はないのだけど、でも法律はなるべく多くの人が分かるべき代物であると言う性質上、読解に人を選ぶようで居てはならない。
その点で、この方針転換は英断と呼べる。


 そして、こうして書いて居ながら気が付いたけれども、俺がこうして書く文体もやはり、法律を勉強した所為かその影響があるみたいね。
難解な言葉使って優越感に浸るような浅ましさを俺は持ち合わせてはいないと思うけれど、でも何の気無しに難解とされる言葉を用いている節がある。
ま、それこそ小学生でも分かるような言葉遣いにする事も全く考えては居ないが。


 ちょっと横道にそれたけども、改めて民法開いたら面白い言葉がうじゃうじゃ出て来て笑ってしまった。
ソースで記述されている「木戸銭」「僕婢」なんてのにしてもそうだし。
また、字が同じでも読み方が違う「兄弟姉妹」(けいていしまい)なんてものもある。
更には、心裡留保(しんりりゅうほ)(())などと言ったような、法律の世界ならではの言葉もある。
因みに、心裡留保とは自分が本心から言っていないことが相手にも理解されるつもりでウソの意思を表明することである。
んと、もっと簡単に言うと冗談。例えば、俺が「こんどスロで7連勝したらこのHPの読者全員に1万円プレゼントしちゃう」などと言った、この冗談そのものを示す。


 良い機会なので、この心裡留保に絡む条文も載せとく。
民法第93条「意思表示ハ表意者カ其真意ニ非サルコトヲ知リテ之ヲ為シタル為メ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 但相手方カ表意者ノ真意ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ其意思表示ハ無効トス」
…な? うんざりするだろ。
因みにこれ口語訳すれば、「何かを意思表示した人が、後でその意志が本意じゃないと言った場合でもその効力はあります。けれどもし、意思表示された人がその真意を知ってたと言う場合には、その表示された意志は無効になります」、となるかな。


 ほかにも。
・水樋(すいひ)
・厠坑(しこう)
・地窖(ちこう)
・牆壁 (しょうへき)
などなど、段々面倒になったのでこの程度にしとくが、何言ってるかさっぱりでしょ。
因みに水樋は水道管、厠坑は汲み取り式便所の穴、地窖は穴、牆壁は仕切り。


 既に刑法や民訴(民事訴訟法)などは口語化されたと思うけれども、それらに続いて民法や商法が口語化されていけば、少なくとも今よりは法に対してのとっつきにくさも薄れ、僅かばかりでも抵抗感などが無くなると思う。
そして、法治国家では法を少しでも知っている事がそのまま武器と成り得る。
一人ひとりが大きな武器を持つと言う意味合いでも、この口語化は大きな意味を為す。
尤も、「生兵法は怪我の元」という言葉もあるのだが。


追記
上で紹介した難解な言葉、クイズにしても面白かったかもね。
正解したところで商品なんぞ無いけれども。