無力を知る

 厚く濃い暗雲の中に佇む友人の、その暗雲を晴らしてあげる事の出来ぬこの身が煩わしい。
俺が今まで蓄積してきた知識、言葉、思想、そう言った諸々のものの何たる無力な事か。


 誰かを救ってやる、などと傲慢な事は思っては居ない。
何よりも、「救う」のは俺ではなく、それぞれ自身である。
けれどもせめて、その立ちこめる暗雲を吹き飛ばす位の某かのものは持っていたいのに。