愛知万博を考える

 さて、そろそろ愛知万博が開催される事となった。
大学を卒業し名古屋を離れて幾年、横浜や東京でもメディアや旅行代理店のチラシなどで、愛知万博に行こうと銘打った広告が掲載されていたり、特集が組まれたりなどしているのを見ると妙な懐かしさと、イベントに対する盛り上がりは感じる。
しかし、この万博、本当に行く価値、または開催する価値はあるのだろうか。


 まず、愛知をはじめとして岐阜、三重などの東海3県以外の人で、この万博に行きたくてたまらないと言う様な人は果たしてどれほど居るのだろう。
その数を一人でも増やす為に広告などで懸命に煽っているようだけれども、マンモスの尻やリニアモーターカー、ロボット受付などでは求心力は薄い。かといって他に何が有るか、と言えば答えに窮してしまうだろう。


 元々、この万博が開催されるいきさつとなったのは、1988年の愛知五輪誘致失敗がある。
鳴り物入りのイベントを名古屋で、と言うのが悲願であった。そして、こういった類のイベント−しかも国家事業クラスのもの−を行うという事は、それだけの整備を行う必要がある。それで潤うのは土建屋。新愛知空港や高速道路建設などもその「箱物」の中にカウントされるものだろう。
また、なぜ瀬戸の辺りを使うか、と言う事にも絡繰りがある。ずばり、土地利権である。
あの一帯は愛知県知事を歴任してきた故桑原氏の所有する土地が多かった。また、その誘いの下、名古屋鉄道などが周辺に土地を買っている。
山なんて価値としては無いに等しい。それを万博を行い、その後住宅とすれば土地代は否が応でも上昇する。将に錬金術


 この万博は問題が多かった事でも知られていた。
広大な森を潰しての開発。生態系の破壊。万博終了後の土地の活用方法。投入した税金とそのリターン。
いくら森を守ると言ったって、長い期間に渡って何百万人も集まれば環境が損なわれない筈はない。また、潰した里山を戻す事は、一朝一夕では不可能だ。
万博が終わってからも住宅地として活用する、というけれども、横浜博の会場跡地として再生利用される筈だったみなとみらい地区−都心から近く交通利便である一等地−でさえも、今なお所々に空き地が目立ち、活用すらされていない土地が多い。まして瀬戸。いくら名古屋から近いと言ったって、名古屋市内にだって住宅地は多いのだし、同じ通勤時間圏内であらばもっと安い所はある。住宅地にするメリットがないのだ。
また、投入された金額は、建設費だけで1500億円近い。それに加え、先程も述べた空港や道路、それら諸々の費用を計算すると1兆円近い金額になる。それは全て税金で賄われるのだ。
建設、開催の理由も後付の適当な理由、使われる金は税金、そして儲かるのは一部の人間。それがこの万博。


 そもそも、万博と言う言葉は正式には「万国博覧会」である。
有名どころでは最初の万博である1851年のロンドン万博、1867年のパリ万博、1873年のウイーン万博。日本では1970年の大阪万博だろう。
これらはいずれも、列強諸国が国家の力を誇示する為に行った代物である。大阪万博もそれに近い目的であっただろう。
しかし今は時代が違う。経済は停滞期にあり、科学力技術力で他国を脅かすような時代では無くなった。
また、情報の高度化は家に居ながらにして様々な情報を引き出せるほどになり、実物を目の当たりにして確かめさせると言う事を抜きにすれば、技術力を示す場は既に存在しているのだ。
そう、時代錯誤も甚だしい。旧態依然とした土地利権を貪る方法に、幾らかの人々がぶら下がり、それを誤魔化す為に華やかな印象を与えているだけに過ぎぬ。
万博の時代は既に終わった。その事に気づかない侭、甘い夢を見ている人がそれをなんとか具現化させようとしているだけの事。
同じ時代錯誤であれば、いっそ衛生博覧会でもしたらどうか。


 俺は万博に行くな、とは言わない。
只、同じ金を使うのであればこんなものよりも、もっと効果的に、かつ満足する方法があると思うのだ。
今のメディア主体の、祭りの前のような浮かれっぷりを見ていると、どうしてもそう思えて仕方がない。
尤も、既に笛吹けど踊らず、と言った風情を漂わせているようでもあるのだが。


追記:ま、もし名古屋以外の人で万博行かれる人がいるのなら、いくつかおすすめを。
・チェーン展開の喫茶店コメダ珈琲店」のメニュー「シロノワール」:甘党の人は是非。暖かいデニッシュの上にソフトクリームを載せたものなんだけど、これが見た目と裏腹で美味しい。珈琲にも合うよ。
小倉トースト:多分どこの喫茶店に入っても存在するであろうメニュー。バターをたっぷり塗ったトーストの上にあんこが乗ってる。これも見た目はキショいのだが、バターの塩分と乳脂肪があんこと抜群にあう。また珈琲との相性も良い。俺が名古屋で見た数々のゲテモノの中で、数少ないおすすめ出来る一品。
矢場町とんかつ屋矢場とん」:是非ここの「わらじかつ」を。大きくて安い。無理にみそかつにする必要は無いのでお好みで。
・ひつまぶし:暇つぶしじゃないよ。鰻重を少しずつ椀によそい、1杯目は普通に、2杯目は薬味をかけて、3杯目は更にだしをかけてお茶漬けのようにして食べる。鰻の蒲焼きとねぎ、わさびの相性が良いことを初めて知った。
手羽先:俺が知ってるのは「風来坊」という店。ちょっと食べにくいけど、美味しい。
鬼まんじゅう:名古屋の和菓子と言うとういろうがメジャーだが、この鬼まんじゅうは穴。角切りのサツマイモを練り込んだ蒸し饅頭で、あんこなども中には入って居ないが素朴でシンプルな味わい。
名古屋市昭和区の喫茶店「マウンテン」:冒険者は是非。場所は各自で調べて。今だったら名城線八事日赤駅が最寄り駅になるんだろうか。ある意味で一番のおすすめであり、ある意味で一番勧められない。只、確実に話のネタにはなるし、良かれ悪しかれ思い出にはなるだろう。因みに俺の下宿のそばであった。
あとは特に見る物もないし。名古屋人は味噌煮込みといい味噌カツと言い、味噌テイストがかなり好きらしいが、かなり個人の嗜好に左右されるのでおすすめはしない。また、観光地として明治村は個人的には好きだけどやはり万人に勧められはしないし。
つうか食い物ばかりだね。