任務:ブランド品即売会を準備せよ

:W250
 DGと書いてあったらドルチェ&ガッバーナより電気グルーヴが思い浮かぶWacremaです、こんばんは。
今日の任務は桜木町、ランドマークホールでのブランド販売会の準備。
よく諸君の近所のホールなどでも「格安ブランド販売会」などと銘打ったイベントなどが行われるだろう。アレだ。
こう書くと、アパレルの販売に携わっているようだけれども、実質は恐らく違う。
推察だけで明確には言えないが、多分「バッタ屋*1」の販売展示会。クライアントは関西の業者で、当然皆関西弁がデフォルトで指示される。


 元々、この任務は俺のいつも使っている所からのものではなく、偶々ネットで仕事を探してる時に見付けたもの。
まあ、胡散臭い匂いは感じ取っていたが、金さえ払ってくれるなら文句は言わん。それに桜木町なら近いし、犯罪の片棒を担ぐと言う様な訳でもないし。
と、言うものの、やりとりは基本的にメールだけ、相手の顔も分からないまま応募して数日は個人情報悪用されたらどうしよう、などと不安にも思ってはいた。
そして実際、今日邂逅してそのクライアントの人々の顔を見るとやっぱり胡散臭い。会社、と名乗っているけれどその「会社」の人は皆どこかチンピラっぽいし、人相も決して聡明であったり穏やかであったりと言う感じではない。
胡散臭…その思いを拭い去る事が出来ぬ侭任務開始。
しかし、ネットで地味に見付けたものとは言え人間て集まるものなんだな。3人くらいしか居なかったらどうしよ、と思っていたけど、男女併せて15人くらいは来ていた。ネットの力侮るべからず。


 最初の仕事は荷物の荷揚げ。ランドマーク地下にやってくる運送会社のトラックから服やアイテム、備品などをひたすら降ろし、エレベータに載せて行く。普通に肉体労働。しかも暑いのでやたらと喉が渇く。
まあそれでも、過去やった佐川の荷物集配所での荷下ろしよりは遙かに楽ではある。
それが終わるとその荷物の整理。系4時間ほど費やしたところで遅いお昼ご飯。
何せ喉が渇いてしょうがない。ホールから降りて外に出ようとした矢先に、イタリアンジェラートの店を発見して衝動買い。飯より先にアイスと言う順番の悪さ。
ボタボタとこぼれ落ちるアイスを嘗めつ外に出れば、朝は心地よく晴れていた天気が厚い雲と強い風に変わっている。
みなとみらい地区に掛かっている「ルーヴル展」の旗が強くたなびいている。


 …そう、今はルーヴル展が横浜美術館で開催されているのだ。
振り返ってみればここ数か月、仕事の忙しさと金穴で、満足に絵を見に行ったり本を読んだりなどしていない。この日記だって仕事の事ばかりで、思考や論述などからほど遠い。文化的生活と対局に位置している。
貧すれば鈍する、と俺は良く書くけれど、こういう所にも現れる。
日々の生活に追われるからつい、そう言うものを遠ざけてしまいがちになるけれど、やっぱりそれではいけない。
開催期間が終わるまでの間に、必ずや俺はルーヴル展を見に来なければなるまい。それは単に俺が見たいと言うだけだからではなく、日々大変だからこそ美しいものに触れて己の魂を磨かねばならない。
こういう仕事をしていて良く目にするような、ギャンブルとスポーツと女にしか興味のないような、享楽的かつ刹那的な男に俺はなりたくは無いから。
唇を噛みしめつつ、仕事場へと戻る。


 後半からは服の陳列。かなりの数はある。
俺はブランドなど良く分からないし、これらが本物なのか、それともフェイクなのかも分からないけれど、殆どの品物の感想としては、あまりセンスが良くない。「Hollywood」と富士額のネズミが書かれたTシャツなんて誰が着るねん。そもそも訴えられるよ。
また、中にはどう見ても古いものだろ、と言うものも混ざっているし−俺はここでバッタ屋ではないか、と思ったのだ−。
それらの横に「今年の新作」などと張り紙を貼る。
値段も安めのが多いけれど、高いのは普通に数万するようなものだし、一概に安いとも言いにくい。
もし、これがタダ同然の値段で買ってきたものだったら、ホールのレンタル料や移動費、人件費などの必要経費を差し置いても、結構なアガリにはなる事だろう。


 面白いのは、今週末から来週頭に掛けては横浜、来週末は東京有楽町。7月頭は名古屋と移動していく。恐らく、同じ品物を売り回るのだろう。
「値段」と「ブランド」というものに目がない人がいる限り、商売としてそこそこの期待値が常にあるからこそ成立してるのだろうね。
考えてみれば、タダ同然のものを売って金に換える、という思考は金儲けの常道であるだろう。俺達の日常、周りに溢れているものの殆どは、最初はタダ同然の値段である。
市販のソフトドリンクなんて原価は数円だし、薬だってその程度。開発コスト、製造コスト、中間マージンなどで次第に値段はつり上がって高くなるものだ。
要は、どうやってそれを売りつけ、黒字で居られるかだ。


 仕事を終えランドマークを出たら、もう外は暗く、週末のデートを楽しむカップル達がイルミネーション輝く桜木町を眺めていた。その内の一組にシャッターを頼まれ、押してやったが、光景は綺麗なので個人的にも一枚撮ってみた。
楽しそうに礼を言う二人を後にして、俺は家路へと急いだ。
俺がかつてのように、ああ楽しく振舞える日は何時になるのだろう。それとも単に、これは隣の芝生は青く見えているだけなのだろうか。
いずれにしても、そろそろ俺はこの稼業を卒業し新たなるステージへと移行せねばなるまい。色々な仕事に携わり、その内実を知る事はとても勉強になるし、楽しいのだけれど「割に合わない」事は既に見えているのだから。


追記:もしこれを読んだ人で、ブランドとかにそこそこ目利きが出来る人は今週末、桜木町ランドマークホールに赴いてその真贋を見極め俺に教えてもらいたい。
俺の直感が当たってるかどうか、俺自身が知りたいから。

*1:倒産した問屋などから格安で品物を買い付け、それを売る商売の事