任務:某家電メーカー社員に偽装せよ

江ノ島夕景

ここんとこ、洒落にならん程忙しく、ネットに接続出来る時間は精々1日30分。高橋名人推奨のゲーム時間より短い程。それには斯様な訳があったのだ。


5月の末頃、「6月の後半から8月の中頃までの仕事がある。それなりにキチンとした方に行って欲しいから是非Wacremaさんに行って欲しい」と紹介された仕事は、某大手家電メーカーの社員に偽装し、トラブルのあった家庭に社員と共に赴き修理したりする仕事だ。
期間が短いとはいえ固定で決まるのは手っ取り早いし、お世辞と分かっていても「ちゃんとした方でないとダメなのでまずWacremaさんにお声をかけました」と言われたらやはり嬉しくはある。ま。取り敢えずやってみよ。


 そう思いてやって来たは三浦半島にあるサービス担当の事務所。
挨拶を交わし早速指示を伺うが、帰って来る言葉は「そこで座って待っていて下さい」と言うのばかり。
朝、8時半に到着し、待てど暮らせど一向に指示は来ない。終いには眠くなり始める始末。船を漕ぎそうになる自分と戦うのが大変。手のひらのツボを押したりなどしつつ、気付けばもうお昼前。
「休憩どうぞ」と声をかけられ、何一つ仕事をせぬ侭に昼飯。アレ?


昼飯から戻って漸く、本来の仕事に入る。
なんでも午前中はどうしても勝手知った者でなければこなす事の出来ない仕事だった故、俺はお預けを食らっていたらしい。
では改めていざ往かん。軽のワゴンに乗り込み出発。
まずは鎌倉の個人宅のクーラーを修理する事から始まって、葉山の豪邸や小さな商店などなど、周り回る事計8件。
気付いたら時間は夜の8時過ぎ。事務所に戻ると9時近い。
仕事の大半は移動で、勿論、業務用の大型冷蔵庫などのように修理に時間が掛かるのもあるけれど、それでも延々と、淡々と作業を繰り返すベルトコンベアのような単純作業ではないし、いつものような「休憩まであと何分…」と消極的に時間が過ぎるのを待つ感じでもない。
また俺はサポートとは言え、お客さんが直って喜ぶ様を見るのも嬉しい。


今のところ、特に大変な思いをすることも無く、何気に仕事は忙しいけれど楽しく仕事を出来ているのは幸いだ。
まあ、終わるのが遅くて、家に帰っても遊ぶどころか何も出来ないのは難点だが。
つう事で、多分これからしばらくはこの日記がお宅訪問記になると思うよ。


 と、下書きを書いたのが数日前。
来たよ、ついに。すんごい大変な仕事が。
今日はクーラーの部品を倉庫に納品する手伝い。10トントラックに満載された重さ30キロぐらいある部品を一つ一つ手で降ろし、倉庫の2階に上げていく。
エレベーターは故障しており、ひたすら急な階段を登りて。
もう、膝が痛いの。おまけに、暑いわ何だで思考能力が低下していく。2階から階段をのぞき込むとふと、ダイブしたら楽になれそう、などととんでもない考えが思いつく始末。
いかんいかん、とかぶりを振り慌てて考えを振り払う。


 汗は将に滝の如く流れ、シャツはおろかパンツまでびしょ濡れ。
ズボンは足に張り付いて動きを封じ、階段の上り下りを一層困難にさせる。
2リットルは飲んだだろう水分も、尿としてではなく総て汗として排出されるから、トイレに行っても全然出ない。
その仕事が終わり、俺は思わずシャツを絞った際に、人間の体ってこんなに水出すんだね、と我ながら関心したほど。


 来あれば楽あり、楽あれば苦あり。
どんな仕事だってそうだろうけども、これはちょっと差が有りすぎた。
とは言え弱音ばかり吐いても詮方ない。
俺は俺の仕事をするだけだ。なんて格好付けてはみたものの、疲労が甚だしいのもまた事実。
救いは、久々に明日たっぷり寝る事が出来ること。


追記 今、実は知人から紹介された仕事があるのだが、履歴書を書くなり断りの連絡なりをする時間とタイミングが無いのは非常に痛い。