任務:ラブホテルのエアコンを修理せよ

Wacrema2005-07-23

 学校が夏休みに入り、朝のいつもの電車も明らかに人が少なく、乗る人の中には早くから海へと遊びに行こうと、逸る気持ちを露わにはしゃぐ人達も見受ける様になった。


 そうか、夏休みかー。
この所季節の移り変わりをダイレクトに感じている。
そんな中、今日の最初の任務はラブホのエアコン修理補助であった。
もはや顔馴染みとなった、いつもサポートに付く社員の人に挨拶をし車に乗り込む。
彼らならではの裏道を駆使し車を走らせる事暫し、葉山々中にある小綺麗な新しめのホテルに到着した。
普通の駐車場は使わず、敢えて裏口の少し離れた路上に車を止める。


 そう言えば、ラブホの裏側は見た事が無かったけどどうなっているのだろう。
好奇心を包み隠しそのまま裏口から中に入る。
普通の事務所みたいなものかしら、と言う予想とは裏腹に、中は10畳程の空間に簡素な応接セット、飲み物が沢山入った冷蔵ショーケース、そしてカウンター越しに一般家庭に良く見られるような極普通の台所がある。
最近のラブホでは良く、食事を供す所も多く、中には電子レンヂで暖めるだけでなく、きちんと調理するような所もある。なるほど、料理はこの台所で作られてるのね。
応接室を抜けるとすぐフロントがあり、PCの画面に表のようなものが表示されている。おそらく部屋の状況を示したものだろう。それを横目に廊下に出て目的の部屋に進む。


 冷房の効いてない部屋は朝にも関わらず蒸し蒸しとしており、また生々しい男女の汗と精液の臭いがしている。部屋自体は綺麗に後片付けされてはいるが、俺達が部屋に入る直前まで使われていた事を物語る。
俺ならば冷房の効いてないホテルになど入る気はしないのだが、何でもこのホテルは人気があるらしく、フロントの方は「冷房効いてないですが」と予め断りを入れても「構わないから」と部屋を取る客が後を絶たないと言っていた。


 BGV(バックグラウンドヴィデオ)としてエロビデオが流れる中、エアコンを解体し故障箇所を見つけようとした所、使用済みのコンドームが突っ込まれているのを発見す。もうー、何しとんねん。
それを除去し、故障箇所を発見した後はプロである社員の方に修理を任せ、俺は暫し暇なのでエロビデオを鑑賞。うむ、元気にやっておるのう。


 動作確認をし直った事を確認すると、ホテルの従業員にその旨を伝え、再び車に乗り込んだ。
夏らしい、原色の瑞々しい緑が映える山々を抜けながら、運転している社員の方はこんな事を教えてくれた。
「あそこな、前に部屋で心中した人らがいるんだよ。」
一時期は噂になり、それをごまかす為に建て替えたと言う。真新しい外観はそういう理由があったのだ。
エロビデオ鑑賞中に幾度か不自然な画面の乱れ方をしていたが、ひょっとしたら何か関係があったのかも知れない。
ま、俺にはそれを知る能力は無いのだけれど。
トンネルをくぐり山々を抜けると、眼下には青い海が広がっていた。
次の任務地は、どこだろう。