夕張探索行

 そもそもの切っ掛けは、単に「財政破綻したとこを見てみよう」と言う、どちらかと言えば悪趣味な理由に他ならなかったのだ。
まあ都市部を見てまわるよりも田舎を見る方が好きだし、何か面白いものでもあればネタになるし、などと軽く思っていたけれども、今回の行程に於いて、一番印象深いものを見るとは想定してはいなかった。


 生憎、曇り空に時折強い雨が降る中を、一番分かりやすいと思しき夕張駅ランドマークに携帯のナビゲーションを合わせ、それを頼りに一路、夕張へと向かう。
進む内に大地は広大な地平線を見せ、晴れていれば良い景色だっただろうにな、と少し残念に思いながらも進んでいると、少し開けたような、けれど物寂しい佇まいを醸す町並みに入る。
そこが夕張の街であった。よく見ると店のほとんどはシャッターを閉じており、また店によっては既に廃屋と化しているものもある。
財政破綻」と言う言葉が思い出される。
標識の示す通りに進むと、近代的で大きな建物が突如として現れた。
「これ夕張の駅ビル?」と、その周囲の状況と大きなギャップを抱える建物の前に車を止めると、小さくて小綺麗な小屋があるのを見いだした。よく見れば「夕張駅」と書いてある。
あれ?
気になって確認してみると、やっぱりその小さな小屋が駅。

では大きい建物はというと、どうもレジャー施設を兼ねたホテルらしい。駅がこんなんなのに、レジャー施設だけを豪華にしたってダメでしょ。
>>そのホテルのリンクはこちら http://www.yubari-wv.com/stay/racy/index.html


 夕張駅を出て、適当に流そうとしているとすぐ、「夕張鹿鳴館」と書かれた看板を発見した。
古い建物マニアとしての血が騒ぎ出す。早速行ってみるとそこは、なかなかのワンダーランド。
建物としては和洋折衷の、往時は上流階級が立ち寄っていたと見られるもので、部屋のあちこちに置いてある調度品なども当時のレベルからすれば良い物だろう。

昔のステレオやラジオ、テレビなどはおろか、厨房には鍵も掛けられてない銀食器や年代物のノリタケが入った棚。更には当時の借用書なども。
管理の大雑把具合に「俺が泥棒ならこれ全部パクるよ?」と苦言を呈したい程。
まあ人はあまり来ない様だし、管理人も正直めんどくさいって感じでずっとテレビ見ていたけれど、一部の好事家には宝の山だって自覚しないと。


 雨模様とは裏腹に、俄然「オラわくわくしてきただ!」ともっと面白いものは無いかと車を走らせていたら。
場所としては下の地図あたりの場所。

すっごいもんがありましてよ?

汽車と駅の廃墟セット。俺は別に鉄道マニアじゃないんだけれど、さすがにブルりと来ましてよ?
初めて目の当たりにする、蒸気機関車ラッセル車と、旧い客車。客車の中は油の匂いがして、俺自身がタイムスリップしたかのような印象さえ受ける。
駅のホームは朽ちているけれども、今も尚その存在を主張し、在りし日を伝える。
どうやらこの列車、一時は本当に野晒しにされていたらしいのだけど、今は有志の人たちが保存を手伝っているようで、客車には「思い出ノート」なども置かれていた。
気恥ずかしくて何も書いては来なかったけれども、その人たちに感謝をしたい気分でいっぱいになった。
>その有志の方々のページはこちら:http://www.geocities.jp/ooyubari_rps/index.html


 暫し、南大夕張駅跡と列車を堪能し、また車を走らせていると、ダム湖が露呈し見えている所があったので降りてみる。

昔はこの寒々しい光景も、緑に包まれて、そしてひょっとしたら街もあったかも知れない。
霧に浮かぶ廃鉄橋も、なんだか妙なセンチメンタリズムを加速させる。
大人4,5人で手を繋いでやっと抱えられるような大木の切り株がごろごろと転がる中、少しだけもの悲しい気分になっていた。


 雨と露でズボンはぐちゃぐちゃになりながらも、靴は最新の完全防水オールコンディション。
「さすがニューバランス、ダムの底でもなんともないぜ!」などと強引に気分をあげ、また車を走らせる。
長い山道を抜けて三笠市桂沢湖に出、そろそろ札幌方面に戻るかと思っているとまた、ナイススポットを発見。

幌内炭坑跡と、そこを軽く見て回れるようにした所で、時間は既に夕方となり陽も落ち始めて居た為にあまり細かい所までは見る事叶わなかったが、良い廃墟でしたよ。
下の写真の煉瓦造りの変電所をはじめ、半分取り壊されてしまっているけれどもホッパーなどもあって気分はSiren2。

まあ夏場だと蜂とか熊とかがちょっとおっかないし、冬は完全に雪に埋もれてしまうために見る時期はかなり選ばれるだろうけれども、興味深い所数多。
特に、この炭鉱敷地内にあった神社の絵馬が、源義経アイヌ人を描いたものだと言われており−現在はこの神社は廃社となっており、絵馬は別の神社に奉納されているのだが、その神社を忘れた−、歴史的にも非常に興味深い。
札幌へと帰る道のり、また一つ廃駅を発見、すかさず写真に納める。


 生憎の天候で、思うように見て回れなかった所もあるし、もっと時間を掛けて見たい所もあったけれど、兎角、満足。
冒頭に書いたけれど、最初「何故夕張が破綻したか」と言う事に関してもっと色々と見て回るつもりだったけど、そんな事すっかり忘れてしまった。
そう、名物であるメロンさえ食うの忘れてた程。
マッカーサーじゃないけれど、「I shall return」と胸に誓った。
俺はまたあそこに行って、そしてまた思いを馳せる、と。


追記:写真は縮小してあります。クリックすると保存してあるアルバムに飛ぶんで、「北海道」つうフォルダから色々見てください。
まあ大方の人の趣味には合わないでしょうが。

併記:夕飯はすすきのにある「jin jin jinkichi」つう所でジンギスカン食いました。ここのジンギスカンが俺の中でベスト。
鍋の縁の溝でラーメンとか煮るの。それが肉の旨味を吸って美味しい事ったら。