紅い鍋

 何時しか師走に入り−そう、何時しか−、日に日に気温が下がりつつある。
こういう時期はやはり鍋。土鍋に結構適当に具を入れ、一度火を通しておくだけで味が出て、俄然美味しくなる。
勿論、あまり火を通さない、歯ごたえのある野菜が好きって人もいるだろうが、俺はしっかり味が染みた鍋が好きなのだ。


 今、ウチは皆が働いており、従ってその日その日で家に居る者が晩ご飯の支度をする事となっている。
とはいえ、家に居る率が高いのは母親こと総司令官閣下であらせられるので、俺や弟が支度をする事はあまり無いのではあるのだが、まあ、俺が支度する事になったので少し思案した結果、キムチ鍋にしようと思った。


 キムチの素を使う方法もあるけれど、今はキムチ鍋のスープが既に売っている。便利になったものだ。
それを鍋に入れ、適当な具を入れて火を入れる。
味を見て、コクを出したい時は普通のキムチを加え、また味が薄いと思ったら中華スープと味噌を少しずつ入れて味を調える。
あとは、各自食べたい時に暖めれば良い。


 そこまで調理して、俺も夕方からふらりとスロを打ちに出た。
往年の名機「サンダーV」が5号機バージョンとなって蘇った、などとメールが来ていたので、少し擦ってみたかったのだけど空いている筈もなく、いつもなら打たないようなジャイアントパルサー(以下大カエル)の半端なゾーンから打って火傷をこさえ、しょぼくれながら冬の夜道を家路に向かう。


 寒かったし、お腹減った。早速、キムチ鍋を暖めて食べよう。


 で。
なんでキムチ鍋にトマトが入っているのでしょう。
確かに俺が作った時はトマトなど入れはしなかったのに。
これは、総司令閣下がミネストローネと勘違いして足したのでしょうか。
でも普通、土鍋でミネストローネは作らないよな。普通は。
既にしっかりと火が通って柔らかく、味噌味の染みたトマトを目の前にふと、焦点が遠くなる夜更け。