ミッドナイト・ランディング

ザ・コックピット(懐

 ANAをはじめとする幾つかの航空機は、着陸する時にスクリーンに機体前にあるカメラの映像を流す。
夜ならば暗闇に滑走路の形に並ぶ着陸灯が次第に近づき、そして着陸すると点々と流れ行く様を見る事が出来る。
俺はこの光景を、何度飛行機に乗っても食い入るように見詰めるのだ。
ガキではなく、良い大人になった今も。


 そういえば昔、「ミッドナイト・ランディング」と言うフライトシミュレーターがあった。(更に遡れば「The cockpit」)
今、フライトシミュレーターと言うと自由自在に空を飛ぶものだけど、昔はただ点で描かれた滑走路に着陸するだけのものもあった。
しかしそれでも、妙なドキドキ感を伴ってプレイしていた記憶がある。


 繰り返しになるが、夜間ただ着陸するだけ、なのだ。
しかしそれでも、近づいてくる滑走路の灯火を見詰めるのは、シミュレーターであっても、現実の飛行機であっても、静かな興奮を誘う。
それは闇に浮かぶ灯火が美しいから、だけでは決してないだろう。
あの静かな興奮は、一体どこから来るものなのだろう。未だに分からない。