日本代表対ペルー戦

本当はね、競技場だのコンサートだのなんて行きたくないんですよ。理由はかつて何回か書いたので割愛するが。
今回も現場を指示されるまでそう思っていた。



 やる気ゼロの姿勢を包み隠し、集合場所に到着すると、見るからに数合わせと思われる「実用的ではなさそう」な面子がたむろしており、その人垣の奥にかつて何度か仕事を共にした彼ら、彼女らが固まっている。俺に気づき、軽口と共に挨拶をしてくる。
何だか大学のサークルみたいだな。軽いデジャヴを覚えながら、おう、ご無沙汰と答えを返す。



 現地に着き担当となるポジションを訊く。
今回のポジションは「グラウンド」らしい。正確には「アウェイ側グラウンドのプレス席真横」。
仲間達にまた後で、と別れを告げて、担当チーフに着いて行き競技場内に入る。


 …これは壮観だ。
テレビで見た選手入場のシーンが頭に蘇る。
配置に着き暫くするとペルー側の選手達が俺の横を抜けグラウンドに向かう。
キーパーでけえ!
ウォーミングアップの後、暫し後に試合開始。


 俺はかつてこんな近くで試合を見たことはない。当然だね、どんな観客よりも前に居るのだから。
試合は開始早々から日本側が押しており、すぐ近くまで選手が来ると、例えではなく本当に息遣いが聞こえて来る。彼らが巻き上げる芝の匂いが届いてくる。
やがて、コーナーキックになった。中村俊輔が5m先に立ちボールを蹴る。
テレビで見るよりもぐいっと弓なりの軌道を描いて飛んでいくボール。だがこれは合わず。


 前半19分。フリーキックで俊輔。
位置的にはちょうど俺の対角から蹴る感じ。蹴られたボールを見ると一瞬、「それはファー(遠)過ぎないかい?」と思う。しかし次の瞬間、ぐいーっとゴール方向に吸い寄せられるように曲がる。巻がそれに合わせてシュート、得点。
俺も一瞬、我を忘れて、おお、と声を上げる。横のマスコミ陣も俄然賑やかになる。


 後半に入るとピッチを交換。
しかし試合展開は日本が押しているから、あまり近くまで選手が来ず残念。
ただ川口の声は遠くからでもよく聞こえた。川口格好いいな、やっぱ。
試合が終わりに近付く頃、突然新しい人員が到着。順番として俺が休憩に入る。
休憩なんざいらんからここに居させろ、と思ったがそれは我が儘なので休憩に入る。
戻ると、試合は終わりウイニングランもとうに終わり。
或る意味一番近くで選手を眺めるチャンス、あっさり終了。


 その後は普通に撤収をし、国際競技場出た。
あとでニュースを見ると、画面の奥にピントの暈けた俺の姿が確認出来た。
だから何だ、と言われると俺も答えに窮するのだが。