バターの消えた日々


 母親こと総司令閣下が帰省あそばされた。
弟は体調を崩し伏せっているため、買い物などを請け負う。


 今日のご飯何にしよう。
献立を考えながらスーパーの中を右往左往する内、乳製品のコーナーからバターが全部品切れしているのを見た。
そういえば、ふた月ほど前にニュースで見た気がする。「製菓店、悲鳴」て。


 何でも、この状況は国の生乳の減産政策と、豪州での大干魃の結果らしい。
ここに至る背景として、2000年の雪印事件で乳製品の需要が低下、2005年度に生乳の過剰から千トン近くを廃棄し、翌年以降を減産しようとしたものの、悪いタイミングで豪州で大干魃が発生、生乳は高騰し輸入に頼れなくなったと言う。

 生乳の優先順位は飲料、チーズ、そしてバターと言う。
モノがモノだけに長期保存も難しいだろうし、チーズやバターにしてもやはり賞味期限がある。
作り過ぎて余すのは勿体無いが、減らせば減らすでこの有り様。
調整担当には幾莫かの同情は禁じ得ない。


 だが、この状況はやはりおかしい。
モノがありふれている現況に慣れているだけ、と言う見方もあるが、国内消費分も賄えないほど、輸入に頼っているのはやはり普通ではない。


 現在から近未来にかけて、世界規模での農業生産物の高騰化が進むと言われている。
主な原因は異常気象とバイオエタノール用の穀物生産へのシフトだ。
特に後者は、普通に農業やるより格段に儲かる事から、北米、南米地域での生産シフトが著しい。
結果、今まで生産されていた小麦などが減少、高騰化し小売り価格に反映されている。
世界が、割安の食料を買える時代は終わりに近づきつつあり、世界的食料危機の時代に入ると指摘する専門家もある。


 そうした中で、日本はどうするべきか。
輸入に頼り辛くなる危険はずっと指摘されてきた。
そして、今俺達の眼前にある現実。乳製品だけではなく、食糧自給率自体の低さ。
道路作るより田畑作る方が先決ではないか、とすら思える。
少なくとも、道路と違って作物は作れば誰かが利用するのだから。