明けました2009

 皆さん明けました。めでたくもありめでたくもない感じでこんばんは。


 さて、年頭からどうもどんよりとした薄暗い雲が皆の頭上に在り、既に一部の人は大雨に降られてずぶ濡れとなっている。
昨年は下半期からの金融恐慌と、それらに引き起こされた輸出業(特に製造業)不振によって日本の経済、雇用そのものがとてつもない急落を見せ、「派遣切り」による生活苦などが方々で噂されて居る状況な訳だが。
まあ、そもそも派遣というものは小泉政権下以降は何よりも、企業のコストカットを第一の目的とされた立場であり、真っ先に首を切られる立場である訳で、本来その点についてあまり文句を言えるモノではないんじゃないか、と。
ただ、契約期間内であっても容赦無く切られるというのは筋違いでもある。それこそ、首切った側は違約金を労働者に支払わなければならないんじゃないかしら、と思うような事例も多々出ている。


 そして、昨年は生活に困窮した派遣会社員が色々と騒動を起こした事も多かった。
秋葉原での通り魔や(尤も、これは生活に困ったとかそういうものではなく、単に個人のコミュニケーション不足に起因する、無関係の人達への八つ当たりに近いモノだと思うが)、コンビニ強盗、無銭飲食などの事件が新聞の事件面を飾った。
おそらく、今年の3月くらいまではそうした事件はますます増えて行くのではなかろうか、と予測している。


 あの金融恐慌は、端的に言えば「世界中のお金が半分になった」と言う事だ。
従って、大多数の人々は生活レベルを落とさざるを得ぬ事態へと突入する。今はまだ貯金があるから耐えられて居るが、次第にそれらも尽きていく。
その影響が大きく出始めるのが、3月以降なんじゃないかな、と俺は思っている。
と、なると、景気が回復しなければ今の派遣切りでの騒動などまだ序章にしか過ぎぬのではないか、という恐ろしい状況もある訳だ。


 俺が登録している派遣会社も、仕事の数自体は減少傾向にあると聞いた。また、例年ある仕事が今年は無くなっていたりなどと言うものもちらほら。
更に、グッドウィルフルキャストが事実上無くなった事で、そこのスタッフ達が大挙してウチの会社のスタッフとなり、おかげでもともとあまり多くないパイを奪い合うという構図にもなっている。
しかし、まだ幸いであるのは、製造業不振でそういった工場などへの仕事は減ったが、飲食などのサービス産業への派遣は増えている事だ。
社員の話だと、登録しているスタッフ自体は多くとも、飲食関係へ出向くのを躊躇う者が多く、おかげでこっちは休みたい日にも拝み倒される事もしばしば。
と、言うことはだ。確かに派遣切りされて失職し、それこそこの寒空に野外で寝、食べるものにも事欠く人がいる一方で、仕事する人を求めている所もまだあると言う事だ。
その意味で言えば、まだ日本には余裕があると言うことも出来る。
そして、余裕がある状態ならまだなんとか食い扶持を稼ぐ事が出来る訳だ。


 問題は、その余裕すら無くなって来た場合だ。
人は、生活レベルを簡単に落とす事が出来ない。
先程、俺は世界中のお金が半分になったと延べたが、その影響を受けて貧しくなっていくのは、ピラミッドの底からだ。
貧困国は更に貧困国となり、そうでない国でも、貧しいものはより貧しくなる。
そして、貧困の再生産が行われ始める。
中流とされていた者も次第に没落し、二極化が進行していく。
結果的に中世のような、貴族と、貧しい市民たちというコミュニティが形成されていく。
そうなるのも決して非現実的な話ではない。


 歴史を紐解いてみると、そのように世相が暗くなって閉塞的になると開放感を求め即物的、享楽的な文化へ至っていた。
いわゆるエロ、グロ、ナンセンスと言われたものだが、今の時代でやれエロだのグロだの言われたところで、どれほどのものがあるだろう。
俺たちは既にエログロナンセンスの只中に居ると思うのだが。
そしてもう一つ、現状打破を願う気持ちが起因となって、「強いモノ」に憧れるようになる。
強い言葉、強い思想、強い国家。そうしたモノへと傾倒していく傾向にある。
時代が中世のように戻るから、といって考え方まで中世に戻るなんて訳はないと思うが、例えば「自国が貧しいなら他国を糧に」という論理のもと、植民地支配を願ったりなんかしちゃうんじゃないか。
そう言った馬鹿らしい、変な懸念さえ出てしまう。


 まあいずれにしても、今年はのっけから先行き不安な幕開け。
けれど、俺自身や諸君の幸いを願ってやみません。ええ。
不透明で薄暗いからこそ、尚。