某有名私大の試験運営

述べ二週間に渡って従事してきた某有名私大の受験運営の仕事が終わった。

今回の任務は試験監督ではなく、運営サイドへの参加。
スタッフのまとめ役をしつつ、本部の雑務をこなす。
以前にも似たような事をしたことがあるので、大体の業務は想像がつく。

ところがね。
運営の補助、と言っても今回はやること無いんですわ。
例えば、他の試験なら答案のチェックや次時限の問題の整理があるのだけど、この試験は機密性を保持する為に、そう言った事は大学教授自ら行う。
すると俺は仕事が無い訳で。ヒマなので見回りばかりしていた。
スタッフの中で唯一、試験中も自由に動ける立場なので出来る暇つぶし。
まあ本当はこれも業務のうちのひとつで、定刻通りの開始、終了が行われたか。居眠りしたりしているスタッフはいないか。
そうした事をチェックする訳だが、仕舞にはなんだか散歩するのが仕事、みたいになる。

今回の業務は先述したように非常に機密性の高いもので、選出されたスタッフもだいたい顔馴染みの者達が多く、故に、初めて会うスタッフには強烈なアウェイ感を齎したようだった。これは俺がリーダーとして仕事する場合、今後気を付けねばならない事だろう。


前半の一週間は横浜の某予備校で、そこは俺もかつて通った所だった。
久しぶりに訪れると辺りはすっかり変遷していたが、パンフレットに載った講師陣のうち何人かはまだ現役でやっておられ、妙な懐かしさと敬意を覚える。


まあ2週間もやってれば色々な事は起きる訳だが、印象深い出来事をふたつ。
カンニング
ある監督員から「どうもカンニングの疑いがある」と本部に報告が寄せられた。
本部での協議の結果、俺がその当人にベタ付きして威嚇することに。
ホシは、現役の女子高生。なるほど、異様に隣をガン見している。ただ単に、視線が泳ぐとかではなく、ガン見。確かめるために真横から見ていると目が合う。
その時は一応、その子は視線を元に戻したのだが、俺が正面に立って見ていると目が再び合う。しかも今度は、やや三白眼でガン飛ばされる。
普通はそういう時は罪の意識などから目を伏せがちになるものだが、むしろこちらを威圧してくる。なんだこいつ?
公式の対応として、物的証拠などが無い限りは試験を棄権させることは出来ず、口頭での注意となる。
俺も注意しようとは思ったのだが、そのホシがカンニングしていた隣の受験生が殆ど間違えていたので、このままにしておいた方が落ちるなと思いスルー。
突厥」を「突決」書くようじゃ、まだまだだ。


・ききわけのない監督員
今回の業務では、一応俺はリーダーとして在り、様々な指示もこなす役割。
当然、監督員に対し「こうしてください」という指示も与える。それは派遣元、派遣先双方の代弁者としての役割でもある。
で、ある監督員に対し、マニュアルにある通り業務を遂行するよう指示をしたんですわ。
そしたらやる気なく「あ、はいはい」と答え、しかも守らず。一回なら良いけれどそれが何度もあるとこちらも困ってしまう。
多分、その人よりは俺が若く、そしてそういう人から指示されるのが面白くないんだろうなとは想像していたけれど、でも仕事は仕事。
一言「了解しました」と言い、自分勝手な事慎むだけでいいのにね。


いままで幾つか試験に携わる仕事をしたが、やはり群を抜いて「本気度」が高いものだった。
受験生の彼ら、彼女らの気迫と熱意は強く感じ取られ、そしてかつては俺もその渦中にいた事を思い出した。
浪人中はとても楽しかったけれど、とてもつらくもあって。
そして、俺は第一志望の大学を落ち失意の侭、名古屋に赴き1年ほど腐っていたこと。
無論、名古屋での生活は今から思い出しても楽しい日々で、良いことも、悪いことも様々な事を学んだ。
ただ、俺が大学を落ちた年の1年は色々な事が重なり、それが今だ大きな影を引きずっている事も事実。
あの受験生たちの熱意と、その内の何%かが味わう挫折。
頑張った人は報われて欲しいな、と思いつつも、決してそうはならない現実。
もし、俺があそこで分岐した別の道を行っていたのなら、どうなっていたのだろう。
考えても詮方ない事が、どうしても頭をよぎった。