瞬間接着傷薬


 仕事中に指を切っていた。
当初全く気が付かず、痛みが次第に強くなり、初めて指先から血が滴り落ちていた事を発見したほどだった。


 あれ?俺いつ何で切った?
刃物は当時持ってなかったし、稀に、紙で切る事はあるけれど、その時は紙扱ってなかったし。
その癖、結構切り口鋭利だし。
痛みとかよりも、その理由に、狐につままれたようなマヌケ面をしていた。


 まあしばらく放って置けば乾くだろう、と気にしないでいたが、ぽたぽたと落ちる雫はなかなか止まる様相がない。
正直、商品に落ちて汚したりしても問題があるのでクライアントさんに申し訳ないが絆創膏はないかと尋ねると、もっと便利なものをお持ちだと言う。

 「これ、人間用の接着剤。」
…はい?
なんでも、人体に悪影響を及ぼさないもので作ったやつらしい。
傷口を少し広げ塗布後、固く傷口を閉じるようにしばらく固定しておくだけ。らしい。
ほー、面白い。話の種にとお借りする。


 見た目は本当に普通の接着剤。違うのはシンナー系の匂いがしない事くらい。
傷口に塗布した瞬間から滲みるような痛みが走り、思わず変な顔になる。
すかさず押さえ、1、2分ほど待つと確かに傷口はくっついて血も止まっている。
あらこれは凄い。感嘆する事しきり。


 非常に便利で、使い勝手も良いのだが、擦り傷には使えないあたりに用途の狭さもあるのがね…
でも、一家にひとつ常備しておいても良いかもね。