まだ微妙にイケてない

 久々に吉宗を打った。
一つには、直感のようなものが閃いたのと、もう一つは次第にこの台の特徴が分かってきたからだ。
空かないかな、と後ろで見ていたら、丁度目の前の初老の夫婦が席を立ったので、止めるのであれば座って宜しいですか?と声を掛け、ああ、どうぞ、頑張ってねと声を貰う。
と、台を見れば隣に座っている中国人が煙草置いてるし。
俺は、ちゃんと権利を譲渡してもらったのであると思っているし、何よりも一人で複数の台を占有する事は店には認められていない。
その中国人に煙草を投げ返し、下目で軽く一瞥し堂々と席に座る。
ちっ、と云う表情を露わにし、ボタンを強打する中国人。


 よく考えれば俺も怖いモノ知らずだな、と苦笑−だって、あいつら金は要るけど命は要らんていうし−。
だが眼前で、台を譲って貰っているのを見ているにも関わらず、平気な顔をして横取りしようとするそのマナーの悪さには辟易した。
兼ねてより口酸っぱく云っているが、総ての中国人がそうだとは思わない。が、圧倒的にマナーの悪い者は多い。
それはどうしてなのかしら、と考えながら打つ。


 大きな原因には、ベースとなる教養の程度と、中華思想そのものにあるんじゃないだろうか。
特に中華思想は、「中国こそが世界の中心である」といった、ある種傲慢な思想である。
それは個人的なレベルに還元されると単なる自己中心主義でしかない。
そう言った思想が個人の根幹を形成していれば、斯様なマナーの悪さも必然。自分が中心で、己さえ良ければどうでもいい事だからね。
だとしたら、全く度し難いものだな。


 ねらい目に近い回転数であったのを確信はしていたので、大きな投資をする事もなく、大当たりを得るに至った。
最近何打っても大当たりを全然引けてなかったし、嬉しい事幾倍。
隣のボタン強打を物ともせず、7を揃えて、いざ。
更に嬉しい事に、その大当たり最中に剣を鞘から抜く様な音と共に7を揃える事に成功。本日分の投資回収どころかプラスに転ず。
ああ、脳内麻薬が駆け巡る。やっぱ吉宗楽しいわ!


 計、4回大当たりを得て、その後可能性が比較的高い回転数までを廻し、何もなしと見るや即行で退散。
余裕があればその後も廻すが、今は一撃離脱して少しでも赤字を取り戻す事が肝要。
俺が退くと例によって中国人が煙草を投げ入れた。莫迦め、それはまた嵌るのだよ。


 さて、ここからが俺のイケてない振りを披露する事になるのだが。
時間もあまったので、最近よくやっている、ゲームセンターの対戦の麻雀をする事にした。
全国の人と対戦するもので、一位になればビリの人から「宝珠」というものを貰い、それが5つ溜まると昇段する仕組み。
俺は漸く、二段になった所だった。


 始めて二時間で、段位全部没収ってどういうことですか。
なんで俺のパラメーター、「一級」ってなってるんですか。
まあ、二時間の間総て、ビリだったって事ですけれどね。屈辱。


 もうこれ最後にしよう、としたゲームで、漸く一位を取るに至る。
このゲームは、持ち点が一定のラインを超えているとお金を入れずまた始められる。特権ってやつね。
折角の特権だからと続けていたら、一位では無いもののその一定ラインを維持するような勝ち方をし続けるようになってしまった。
気が付けばモノレールの終電は無く、歩き確定の時間。得るものなく、帰る事にする。
まだ一位取って昇段してれば別だけど、これじゃあシジュフォスの神話。


 帰途の最中、先日食べ損ねた鮭イクラのおにぎりを再び買う。
こないだは食べる前に落としてしまったから、今回は気を付けて食べようと心に誓う。
「引く」と書いてあるビニールを剥がし、包みを開ける。
ビニールに鮭の切り身がひっついていて、ぽとりと。


俺は、何か悪い夢でも見ているのか?


追記 まあイクラは無事だったんですけどね。俺の目的はイクラじゃなくて鮭なのに…。