子供遊びに残る太平洋戦争

 父親の墓参りに行って来た。相変わらず唐突に提唱されるので鬱陶しいと言えば鬱陶しい。
過去に何度か書いた通り、いつもなら車で行く所なのだが、俺は体調が芳しく無く、弟も夜釣りの疲れがあるから運転は避けたい、と言う事で電車を使う事に。
母親は複雑そうな顔をしていたが、運転手が居なくては車は動かない。


乗りこんだ電車の中では、子供達が歌を歌いながらジャンケンの様な遊びをしていた。
「軍艦、朝鮮、ハワイ」と言う歌。
俺も子供の頃にやった記憶があって、朧気乍らに記憶を辿り説明する。
これは軍艦がグー、朝鮮がチョキ、ハワイがパーに対応していて、親である方が主導権を握りリズム良く「ハワイ、軍艦、軍艦」等と3回唱え、その3回目が実際のジャンケンになる。
勝った方が新たに親となり、テンポを狂わす事無くゲームを継続させていく。親の勝ちやあいこは親が継続される。
わざと3回とも同じのにしたりする事で心理的戦略を狙う事も出来る。
こうして決着つく事無く、延々と続くのである、様なものだと思った気がする。


思わず懐かしいなと口に出したが、聞いていて何か違和感が残る。
一緒に聞いていた弟もそう思ったらしく、あれ、違くない?と俺に問うた。
何だっけ、と良い年した大人の俺達も口ずさむ。
「軍艦、沈没、ハワイ」。
そうだ、朝鮮じゃなくて沈没だ。少なくとも俺達はそうやって来た。


俺達の知る遊びと、あの子供達の遊びが、どうした経緯で違ったかは分からない。
ベースは同じものであるだろうから、何処かで聞き違えが起こったか、或いは意図的な変移が加えられたか。
そもそも、これが全国的に存在するものなのだろうか。
考えてみれば、大学の時に住んでいた名古屋では聞いた事が無かった。


 ただ、これらの単語は紛れも無く太平洋戦争を意味しているものだろう。
それも具体的に言えば、真珠湾攻撃。「朝鮮」バージョンの場合は当時の情勢を映していると言える。
此処、横浜は他の地域に比べても海軍や飛行隊の基地も多かった。
市内の野島という所には今尚、戦闘機を保管していた巨大なトンネル状の格納庫が存在する。
そういった背景もあるのではないだろうか。
則ち、これは軍人が遊んでいたものが子供に伝えられたものではないだろうか。


そして、戦争が終わり、半世紀を疾うに経ていても、こうした些細な所に今尚、その痕跡の様な物が息づいている事を、非常に興味深く思った。
兎角、戦争というとネガティヴなイメージに囚われ、そしてそれは事実ではあるのだけれども、そう言った感じのものではなく、純然とした好奇心を刺激された。


追記:他の地方にもこの遊びは存在するのだろうか。もし横浜以外で「うちにもあるよ」と言う方が居られたら無記名で良いので場所と伝わっている言葉を教えて欲しい。
いや、別に調査して何かするのではない。単なる好奇心、ただそれだけ。